伊集院静が訴える「日本の経営者はサントリー創業者の鳥井信治郎に学べ」宮澤正明撮影

日本経済の停滞の一因として、「経営者力」の弱さが指摘されている。新たなビジネスモデルが生まれず、産業の新陳代謝が進まなかったり、経営者が自らの保身で企業経営をおかしくしたりする例が後を絶たない。戦後、日本を高成長に導いた経営者とは何が違うのか。国産ウイスキー作りを初めて手がけるなど、洋酒文化を日本に導入したサントリーの創業者、鳥井信治郎の生涯を描いた「琥珀の夢」(集英社)を、このほど出版した作家の伊集院静氏に、経営者に求められる資質を聞いた。(聞き手/ダイヤモンドオンライン特任編集委員 西井泰之)

創業以来、守られてきた
「隠徳」の精神

――この本を書くきっかけは何だったのですか。

 以前から仙台に住んでいまして、東日本大震災で自宅が半壊、旧知の人の家族も亡くなりました。ほどなく、サントリーの営業所から救援物資が届いたのです。私は十数年前からサントリーの広告作りに関わっていましたので、その関係なんだろうなと思って、2ヵ月ほどして本社にお礼に行きました。