米中戦争のハリウッド映画で、トランプと習はぴったりの主役に

 ハリウッドが米中戦争をテーマに映画をつくるとしたら、ドナルド・トランプと習近平ほどぴったりの主役はいないだろう。

 トランプも習も、偉大になりたいという自国の強い願望を体現するリーダーだ。2012年の習の国家主席就任が中国の台頭に拍車をかけたように、中国批判を繰り返したトランプが米大統領に選ばれたことは、アメリカが中国の追い上げに厳しく対応していくことを決定づけた。トランプと習は性格的には正反対だが、覇権争いの主役として次のとおり不吉な共通点がある。

・自国を再び偉大な国にするという野望をもつ
・その夢を実現するうえで、相手国が最大の障害だと考えている
・独特の指導力にプライドをもっている
・自分の力で自国を復活させてやるという意欲に燃えている
・抜本的な改革が必要な、難しい国内問題に取り組むと宣言している
・腐敗という「膿を出す」ためにポピュリズム的な愛国意識を煽り、自国の歴史的使命を妨げる相手に対決姿勢を示している

 迫りくる米中両国の衝突は、戦争に発展するのか。トランプと習、あるいはその後継者たちは、アテネとスパルタ、あるいはイギリスとドイツの指導者と同じ悲劇的な道をたどるのか。それとも100年前のイギリスとアメリカ、あるいは冷戦時代のアメリカとソ連のように、戦争を回避する方法を見つけるのか。

 もちろん、その答えは誰にも分からない。だが、トゥキディデスが明らかにした構造的ストレスが、今後大きくなるのは間違いない。

 トゥキディデスの罠など存在しない、と否定しても、その現実味が低下するわけではない。逆に、トゥキディデスの罠の存在を認めたからといって、これから起きることを容認するわけではない。私たちは未来の世代のために、歴史の容赦ない性質を直視し、その流れを変えるために全力を尽くす責務がある。