各部署の仕事を想像して
出てきそうな「反論」を予想する

まず言いそうなことは、「見積時間を短縮したからと言って、それで売上が増えるのか?」ということでしょう。新しいシステムを導入したり、業務を改善するには、当然コストがかかります。それに見合うだけの利益が本当にあるのか、という疑問は当然上がってくると思われます。

一方、営業部門の立場からするとどうでしょう。自分の頭越し”に見積依頼が飛び交うことになると、商売の都合上、優先的に回答したいお客さんがいるかもしれないのに、自分でコントロールできないことになります。また、生産管理部門や技術部門の人にしても、「弊社は、この業務改善によって見積が従来よりも格段に速くなります!」などと外部に宣伝されてしまうと、仕事の順番や速度に制約を受けることになるでしょう。

このように、良かれと思った業務改善でも、局所的に見れば必ず「負の側面」があるわけです。それを押してでもやるべきことなのかどうかを、この時点でチェックする必要があるわけです。

具体的には、この時点で以下のようなチェックが必要になります。

【代表的な業務用件時のネガティブチェックリスト】
□この改善で組織全体として、どれほどメリットがあるか?
(売上等定量的なものと顧客の評判等定性的なもの)
□この改善で各部門が喜ぶことは何か?
(コスト、売上、業務時間、社員の快適さ、チームワークなど)
□この改善で各部門が嫌がることは何か?
(コスト、売上、業務時間、社員の快適さ、チームワークなど)
□この改善は法令や内外の規制、基準に触れないか?
(労働基準法など)
□反社会団体等悪意者に狙われるリスクはないか?
□同じメリット(この場合は納期短縮)を生むために、他の手段はないのか?
(本当に、この改善が最適なのか?)


( )内に示した切り口は組織によってさまざまですから、あなたの会社に適する形でカスタマイズして見てください。少なくとも、まずは業務用件定義の時点で、最低限これだけのことはチェックしておくことが必要です。

そして、これらの被害(損害金額など)を想定して、それを防ぐことができるのか、防げなくても組織として許容できる範囲かについて十分に検討することが、本当に役に立つシステムを導入するために欠かせない工程になるのです。

※本連載は、誰も教えてくれない「システム開発における発注者側の役割」と「成功のポイント」をストーリー形式でまとめた『システムを「外注」するときに読む本』と一緒にお読みいただくことで、学習効果が倍増する構成になっています。ITベンダーに発注する前に、最低限の知識を得て、トラブルを回避してプロジェクトを成功させるために、是非ご一読されることをおすすめします。