「考えるプロセス」は最初に決める

 最初に、「もしも技術問題がこうで、営業状況がこうで、特許問題がこうで、財務的にこうなら、我が社はこの分野に進出する。そうでなければ進出しない」という「意思決定プロセス」が固められていれば、もっと早く結論が出たはずです。

 しかも、洋服の買い物の例でわかるように、意思決定プロセスは情報収集をはじめる前に考えるべきことです。なぜなら、意思決定プロセスが明確になれば、それに合わせて必要な情報だけを集めればよいので、情報収集に必要な時間が大幅に短縮できるからです。

 たとえば「品質にかかわらず1万円以上の洋服は買わない」という意思決定プロセスをもっている人は、ブランド店には調査に行く必要がありません。そんな店には1万円未満の服はほとんどないと最初からわかっているからです。またネット通販なら価格で絞り込んでから検討できます。先に思考プロセスが決まっていれば効率的に情報を集められるのです。

 社長直轄プロジェクトにおいても同じです。最初に「我が社がこの事業に進出すべきかどうかは、日本国内の状況のみで判断すべきだ。海外はかなり前提条件が違っているので、現時点での意思決定には入れ込むべきではない」と決まっていれば、海外市場の調査がなくても意思決定ができたはずです。

 もしくは最初に「今回の意思決定で決定的に大事なのはコストだ!」と合意ができていれば、コストだけを集中的に調べて結論を出すことが可能だったでしょう。

 彼らが最初の会議で話し合うべきだったのは、こういった「我が社の意思決定プロセスはどうあるべきか」という議論だったのです。ところがそれを飛ばして闇雲に情報を集めはじめたため、ただただ忙しいだけで結論は出ず、いつまでも延々と会議を続け、大量の無駄な作業が発生してしまったのです。
 

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