日本中を巻き込んだ大論争に発展しているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加。その論争に、ついに一応の決着がつけられることとなった。与党である民主党内からも反対の声が噴出するなか、野田首相は11月11日の会見において、TPP交渉に参加する意向を正式に表明したのである。しかし、国民生活に大きな影響が及ぶ可能性が高いにもかかわらず、我々はその影響の大きさを、実は詳しく知らない。肝心の政府や産業界において、様々な試算や思惑が飛び交い、議論が迷走しているからだ。TPPという名の「止まらない電車」に乗せられた国民は、いったい何を信じればいいのか。混迷を極めるTPP議論のポイントを、改めて整理してみよう。(取材・文/プレスラボ・宮崎智之)

国中を巻き込んだ論争に一応の終止符
野田首相がついに「TPP交渉参加」を表明

「もしTPP交渉に参加したら、日本の農業は国際競争に晒されて、今度こそダメになる」

「いや、参加せずに鎖国状態を続ければ、いずれ国内経済はジリ貧になる。日本は国際市場に打って出ないと、もはや生き残れない」

 シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアの9ヵ国で、関税撤廃などについて話し合われているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。冒頭のように、その参加については、賛成派と反対派のつばぜり合いが続き、日本を二分する大論争へと発展した。

 よくも悪くも、TPP交渉への参加は日本経済の行方を左右しかねないインパクトをもたらす。そのため、農業など「開国」によって大きな影響を被る産業の関係者、経済の専門家、与党・民主党まで含む超党派の議員らが反対の気勢を上げ、デモや国会前での座り込みが行なわれるまでに至った。

 そんななか、先日ついにこの論争に一応の「決着」がつけられることとなった。野田佳彦首相が11月11日に会見を開き、「明日から参加するホノルル・APEC首脳会合において、TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入ることとした」と、表明したのである。