ニコンの中国工場閉鎖はなぜ避けられなかったのか

 足元でわが国企業の業績が急速に上向いている。電機、化学、建設機械などを中心に幅広い業種で業績の上方修正などが発表され、株式市場も久々の活況を呈している。

 その一方、業績が伸び悩み、戦略の転換を迫られている企業もある。10月30日には、ニコンが中国のデジタルカメラ工場の操業停止を決定した。

 同社は、2002年から中国でデジタルカメラ生産を行うなどし、収益の半分程度を映像事業から獲得するビジネスモデルを構築してきた。その結果、リーマンショックまでは世界のデジカメ需要を取り込んで成長を実現することができた。

 ところが、スマートフォンの登場がこのビジネスモデルの競争力を一変させた。スマホの画像処理能力が著しく向上し、写真を撮りSNSでシェアするという行動が定着した。それによって、デジタルカメラの需要は低下した。

 世界的にデジカメ市場の縮小が進み、ニコンは当該事業のコスト削減に戦略をシフトした。しかし、事業規模を維持しながらコストを減らすことが限界を迎え、ビジネスモデルそのものの見直しを余儀なくされたといえる。

 デジタルカメラだけでなく、自動車をはじめさまざまな分野で、これまでにはない環境の変化が起きている。そうした変化に適応し付加価値を創出していくためにも、各企業は従来にはない新しい取り組み=イノベーションを間断なく進めていく必要がある。

環境変化への
対応が遅れたニコン

 過去5年間、わが国の株式市場はそれなりに上昇基調を描いてきた。その中で、ニコンをはじめとする精密機械関連のセクターでは、主力企業の株価も堅調な展開を示してきた。株価が上昇してきた企業の共通点として、従来の技術力などを活かして医療用の機器や、半導体などの部材で競争力を高めてきたことは見逃せない。