[ワシントン 5日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)次期議長に指名されたジェローム・パウエル理事は、少なくとも就任後数カ月は、健全な経済成長と連邦公開市場委員会(FOMC)内の総意というイエレン議長の遺産を受け継ぐことができるだろう。

だが、パウエル氏は、イエレン議長が残した課題も引き継ぐことになる。「なぜ低インフレが続いているのか」「金融政策の運営に当たって市場の状況をどう考慮に入れるのか」「低金利下で景気後退が起きた場合、どう対処すればいいのか」という問題だ。

パウエル氏は弁護士出身の64歳。上院で指名が承認されれば、こうした課題にFRBの調査スタッフ、地区連銀総裁、本部理事と対処していくことになる。

地区連銀総裁12人中、博士号の取得者は7人。理事としての任期が2024年まで残っているイエレン議長が理事を退任すれば、理事会内の経済学者出身者はブレイナード理事のみとなる。

メルク・ハード・カレンシー・ファンドのアクセル・メルク社長は「パウエル氏は規制の問題に強い関心があるのだろう」と指摘。「だが問題は危機が起きた時にどうするか、誰に頼るかだ。パウエル氏が聡明な人物であることは間違いないが、ことによると、問題を軽くみている可能性がある」との見方を示した。

パウエル氏は2012年からFRB理事を務めているが、経済学の学位を持たないFRB議長が誕生するのは、1970年代のウイリアム・ミラー議長以来となる。ミラー氏は、インフレが高進するなか、短期間で議長を退任した。

<目先は安泰だが>

FRBは、短期的な経済見通しや金融政策スタンスには自信を深めているが、低インフレがここ数年根強く続いていることから、米経済が以前よりも景気後退に陥りやすい体質になったのではないかと警戒している。

一部のアナリストは、イールドカーブのフラット化が、市場の疑念を映し出していると指摘。低金利が続けば、利下げ余地が乏しくなり、不況時に量的緩和の再開や、マイナス金利の導入を強いられる恐れがある。

パウエル氏は、イエレン議長の総意形成の下で、以前よりも「ハト派」的な姿勢を強めたとみられているが、次に不況時には苦しい立場に追い込まれかねない。自身が共和党員でありながら、共和党のトランプ大統領と共和党主導の議会の下で、共和党保守派の反発を招きやすい政策の検討を迫られる可能性があるためだ。

コチャラコタ前ミネアポリス地区連銀総裁(ロチェスター大学教授)は「1つの懸念材料は、パウエル体制が、景気後退時にイエレン体制と同じくらい攻撃的・積極的に動けるかだ」と指摘。パウエル氏が理事就任直後に「非伝統的な金融政策に不安を示していた」ことを明らかにした。

<理事会の陣容に不透明感>

今後のFRB理事会の陣容についても、不透明な部分が残っている。

トランプ大統領はFRB理事をあと3人指名できる。イエレン議長が理事を退任すれば、4人目の理事も指名できる。うち1人は、副議長としてパウエル氏を支えることになる。

コーン国家経済会議(NEC)委員長は3日、空席の理事についてパウエル氏との協議を近く開始し、年内に人選を終える考えを示した。

バークレイズのアナリストは、パウエル氏について、投資銀行時代に培ったマーケットの専門知識を補完するため、「金融政策の理論的な土台に専門知識がある候補を求めるかもしれない」と分析。

「最も重要なのは、次の不況時の金融政策運営だ。(FRBには)共和党からの批判が相次いでいる。次の不況時に非伝統的な政策が使われるのか、疑問視するのが妥当だろう」との見方を示した。