WTO加盟のときと違い、中国市民のTPPに対する関心は薄い。日本にとってのTPPのメリットが明確に伝わってこないため、中国のマスコミでは日米による中国「牽制」という文字が躍っている。両国はともに、中日にとってのTPPの意味を冷静に分析すべきだ。(在北京ジャーナリスト 陳言)

TPPに参加すべきかどうか
北京市民の関心は薄い

 中国のテレビをつけると、東京ではTPP反対のデモ行進が派手に行われているシーンが流れてくる。新聞を広げて読むと、中国を「牽制」するために野田政権はTPP交渉に参加しようとしている、という記事が躍っている。

 しかし、北京の一般市民は、2001年のWTO(世界貿易機関)加盟の時のように情熱的に議論する気持ちはすでになく、中国がTPP交渉に参加すべきかどうかには、それほど関心を持っていない。マスコミから伝わってくる日本の動きなどは異様に感じる。

 とくに「牽制」という言葉は、中国一般市民の感覚では戦争のイメージが強く、日本の世論で使われてる「牽制」は、そのまま中国語として使うと、たいていの人にとって、あまり良い気持ちはしない。

 一方で、日本の経産省にあたる商務部のスポークスマンは「別にどこかの国の指導者から、正式にTPP交渉に参加してもらいたいという依頼は来ていないし……」と記者会見で言い、「中国は冷遇されている」という語感もその言葉から滲んでくる。

 2010年に中日の年間貿易高は、3000億ドルを超え、中国とアメリカの1年間の貿易は、3800億ドルにものぼる。

 この数字はマスコミが言う、日本がTPPに参加して、中国と軍事的に対立し、経済でも孤立させていくというイメージとは、あまりにもかけ離れている。たとえ日本では「牽制」という言葉が使われていても、中日が国交を樹立して40周年を迎えようする現在、はたして実際にそうなるだろうか。