ホンネで考える
企業の備蓄

災害用の備蓄品は定期的な「見直し」が欠かせないPhoto by Red Cross(出典:Wikipedia)

 さて、いよいよ企業の備蓄について考えてみたい。ここでは担当者が保管廃棄に常に頭を悩ませる「備蓄食料」について主に取り上げる。誤解を恐れずに言うと、備蓄食料に関して「従業員の人数分だけ、3日間3食分、同じクオリティの食事を用意する」必要が本当にあるのだろうか。例えば、発災日当日の朝食については、極めて使用可能性は低いと考えられる。同じように、3日間の現実的なシミュレーションをしてみよう。

 まず、事業所に100人が勤務していたとする。これに来客者、訪問者が10人いたとして、地震が朝10時に発生したと仮定すると、発災日当日は110人×2食で220食あれば足りる。少し乱暴な計算になるが、次の日の午前中には約半数は帰宅することができるとすると、全員が朝食を食べて帰ったとして、2日目の昼・夕食は半分の55食×2=110食で済む。翌々日の午前中に8割強が帰宅できるとすると、3日目の昼・夕食は20食でよい計算になる。この計算で行くと、110人×3食×3日分=990食から、1日目220食+2日目220食+3日目95食=535食で足りることになり、およそ6割程度で済むことになる。

 もちろん、企業が備蓄食料を3日分990食完備することや、3日間程度従業員を社内に留められるようにすることは、条例で定められた重要な努力義務だ。ただ、備蓄食料も地震が発生した際に「利用可能性が高い」ものと「利用可能性が低い」ものに分けて考えてみたらどうだろかという提案だ。備蓄食料は、やみくもに数をそろえるのではなく、「利用可能性が高い」部分に関しては質の高い味の良い食料を備えてもいいのではないだろうか。さらに、弱者目線に立ち、普段から社員の食品アレルギーなども会社で把握し、必要であれば7大アレルゲン不使用の缶詰なども購入しておけばより効果的だろう。普段から質の高い備蓄食料を準備しておけば、期限切れ間近のものであっても社員が自宅用として持ち帰る可能性も高くなり、廃棄量も減る。

 ほかにも、社員の多くが常駐している会社と、ほとんどが営業などに出ている会社、あるいは来客が多い会社とでは、当然、災害時に社内にいる人数が異なる。企業のBCP担当者は、こうした企業の状況を踏まえ、現実的な必要数を揃えることから始めたらどうか。

 東日本大震災から6年半が経過し、震災後に備えた備蓄食料も消費期限を迎え、見直しを図っている企業も多いだろう。それぞれの会社の事情に合わせた「本当に必要な備蓄」を、企業のBCP担当者にはこの機会にぜひ考えていただきたい。

災害用の備蓄品は定期的な「見直し」が欠かせない