ファイナンスの定石2
株式は1人の創業者に集中させろ

 創業者のあいだでどのように株式を持ち合うのかという点は、非常に重要な論点となる。よく見聞きし、かつ最悪なのは、創業者間で同等の量の株式を持ち合うことである。たとえば、2人で創業して50%ずつ株式を持ち合う、3人で創業して33%で持ち合う、といったケースが該当する。

 これは企業が失敗するもっとも大きな原因の1つである。株式を同等比率持ち合うことで、企業のオーナーシップは分散してしまうことになるからだ。シェアハウスで誰もオーナーシップを持たないと共同スペースが汚れていくのと同様の原理である。誰か1人が強いオーナーシップを持って推進していくことが求められる創業期で、この分散は致命的である。創業メンバーが去るときには、その株式の処理も問題になる。

 持ち株比率の組み合わせは一見難しそうだが、対応はシンプルである。2人で企業を創業するならば、6:4、7:3、10:0など、3人でやるなら8:1:1などの比率にする(図2)。

株を創業メンバー3人で分けるのが最悪な理由図2 創業者の人数と持ち株比率の推移の例
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 創業者のうちの1人に創業時の株式を集中させることで、外部からファイナンスを受けても企業の支配権を一定程度確保し続けることができる。創業者のメンバー数や株式の保持の仕方は図2にあるパターンでほとんどすべてである。

 ファイナンスをしたときにどのように希薄化するかの具体例を図3に例示した。細かい数値を覚える必要はないが、自分たちの創業メンバー数を見て、どのような形でファイナンスが進むのかをイメージしておいてほしい。これが頭に入っているかいないかで、持ち株比率に関する検討時間を最小化し、ほかのアクション(調達タイミングや調達先の検討)に時間と労力を割くことができる。

株を創業メンバー3人で分けるのが最悪な理由図3 ファイナンスを経た支配権・評価額・調達額の一覧
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