ここ数ヵ月、ドル安、ユーロ安、円高の背景として米経済の低迷、ギリシャ危機、米欧政策の手詰まりに関連するイベントニュースが錯綜した。しかし、それらを真に受けても相場には乗れない。当欄では前回もこの点を指摘し、金利シグナルを軸に据えて相場の動きを整理する視座をご案内した。

 ユーロ圏は、立場の異なる国々が交ざった集団的意思決定、愚直なまでの財政・金融健全主義が災いし、政策対応がおのずと後手に回る宿命にある。しかし、債務問題の緊迫度が増した春から夏にユーロは堅調だった。この時期、米景気が悪化に転じる一方、欧州中央銀行は利上げし、金利差がユーロ有利に振れていた(上のグラフ)。

 投資家や銀行はギリシャ資産を1年以上前から処分してきた。それによる資金逃避はユーロ相場を金利から乖離させた。しかし今回、イタリアやスペインから新たな資本逃避が発生する土俵際までは、欧州金利の有利さがユーロを押し上げた。ただやがて市場の混乱は欧州金利の再低下予想を招き、それによるユーロ売りがギリシャ以外の国々の資産売却を惹起し、あわてた欧州当局がようやく対策を講じるに至った。