最近、フィンテックという言葉が、もっともらしいけれど実際には定義や意味があいまいなバズワードとして世の中に受け入れられつつあります。個人的には、金融サービスの領域で用いられる新興テクノロジーと大きく捉えておけば、間違いがないと考えています。海外の現場ではフィンテックを使ってどんな新しいことが起こっているのでしょうか。世界の「現場」の模様をレポートします。(文・撮影/NTTデータ経営研究所研究理事 山上 聰)

オレゴン州の地銀で
銀行窓口をチャットで代替

 オレゴン州の最大地銀アンクア(Umpqua)銀行は、支店におけるアットホームな対応を売りに近年M&Aで規模拡大をしてきた銀行です。

アンクア銀行の店舗に設置された「頭取直結」の電話

 アンクア銀行の店舗にはどこでも頭取に直結したダイレクト電話が設置されているくらい、顧客志向に徹しています。ところが最近の取引チャネルのデジタル化は、利便性や運営コストの点で有人店舗の価値を上回るようになり、大手銀行は我先に店舗閉鎖を進めるようになりました。一方、店舗こそ最も大事な顧客接点と考えるアンクア銀行にとって、大手行の動きは株主に対する説明責任を果たせない状況を生み出しかねません。

 そこでアンクア銀行が傘下のベンチャー企業とともに生み出したのが、BFFと呼ばれるサービスです。このサービスは、顧客とのやり取りをモバイルSNSのチャットやビデオで行い、顧客に24時間対応の利便性を提供しながらも、“ハイタッチ”を忘れない工夫をしたものです。

 このサービスを利用すると、これまで来店によってしか対応できなかった住所変更、投資相談、住宅ローン等の借り入れの相談がSNSでのやりとりによって実現できるようになります。このサービスの裏側には人工知能があり、顧客からの苦情や相談などのデータで学習させることで人工知能でも“顧客思い”の充分な対応ができるようになるのです。