就職に失敗するとフィルターが見つかる!

 じつは、学生にはまったく見えていない「自分に必要なフィルター」も、少し働けば誰でもはっきりと見えるようになります。特に、最初の就職に「失敗した!」と感じた人は、入社後すぐにでもその失敗の原因を理解します。そして、「自分にとって意義のある仕事選びのフィルターはこれだったんだ!」と気がつくのです。

 よくある失敗例のひとつは「勉強が好きだから」という理由で研究者への道(博士課程への進学)を選ぶパターンです。ちきりんの知人にも、そう考えていったんは研究者を目指したものの、途中で「やっぱりこの仕事は自分には向いていない」と気がつき進路変更をした人がたくさんいます。

 彼らが口々に言うのは、「狭い分野をひたすらに深く掘り下げる仕事より、幅広く世の中の事象を見たり聞いたりする仕事の方が好きだとわかった」ということです。また「自分には、1人で思索を続ける仕事より、大勢で話し合いながら進める仕事の方が合っていた」という人もいます。

 彼らの仕事選びのフィルターは次のように変化したのです。

  最初に使われたフィルター

・「勉強が好きか嫌いか」

・「その分野について強い興味があるかどうか」

      ↓

 あとから気がついたフィルター

・「狭く深い仕事か、広く浅い仕事か」

・「おもに1人で取り組む仕事か、チームで働く仕事か」

 最初に彼らが使ったフィルターのひとつ、「勉強が好き!」というのはひとつの適性ですし、研究者とはまさにそういう人に向く仕事でしょう。しかし実際には「深く狭く突き詰めるタイプの勉強」と「広く浅く多くを学ぶ勉強」は大きく異なります。このふたつを分けるフィルターの存在に気がついていないと、自分にはまったく向いていない職業についてしまうことになるのです。