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カイゼン!思考力

まあリーダーがそう言うなら…――機長症候群

嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]
【第73回】 2011年11月18日
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陥りがちな思考の罠に迫る「カイゼン!思考力」。今回は、「機長症候群」を取り上げる。

――問題です

 以下のA課長の問題は何か。

 A課長はある企業の広告を担当している。部下のB君とC君、そしてA課長の上司のDマーケティング部長の4人で、ある商品のプロモーションについて話し合いをしていた。

A「やはりこの商品は差別化された機能をドーンと目立つように打ち出すべきだと思います。小さくて持ち運びがしやすいというメリットを、なるべく情感に訴えかける表現で顧客に伝えましょう。そうすれば、きっと注目を浴びるはずだわ」

B「僕もA課長に同感です。ターゲットはいわゆるF1層(注:20‐34歳の女性層)の女性が中心ですから、そのアプローチがいいでしょうね。とにかく彼女たちの共感を得ないと」

C「僕も同じ考えです。F1層に知名度や好感度の高い女性タレントの○○なんて使うといいと思います。イメージぴったりですし、いまが旬のわりに、まだ若くてギャラもそんなに高くないから、狙い目じゃあないでしょうか」

B「ユーザーイメージにも近いし、いいね。僕もファンなんだ」

A「○○は確かにイメージ合うし、好感度も高いわね。じゃあ、その線を軸に進めましょうか。他に広告イメージに合う候補はいるかしら?」

D「おいおい、ちょっと待ってくれ。昨今の不況の折、まずタレントを使うという前提で話を進めるのは感心しないな」

A「はあ、でも…」

D「そもそも、F1層向けの商品だから情感に訴えてというのも、発想が紋切りじゃないのかね。今回の新商品は、これまでにないくらいに機能的な差別化が出来ているんだ。もっとそこをストレートに打ち出していけば十分じゃないのか?」

A「そうはおっしゃいますが、有名タレントを起用した途端に爆発的に売れ始めた『△△』のような例もありますし」

D「A課長、それはその通りだが、『△△』の時は、使ったタレントが知名度も好感度ナンバー1だったのだから、そのくらいの効果は当然出るよ。もともと想定していた広告投資も大きかったからな。ずいぶん広告にはお金を使ったよ。今回のケースとは一緒にできない。個別に考えていかないと」

A「それにしても、『△△』の時は10倍の売上増ですよ!」

D「いや、僕の長年の経験でいえば、やはりこういうケースでは、奇をてらうより、もっと機能面を前面に打ち出すことだ。そうすれば大当たりは仮にしなくても、大コケすることもない。『△△』の時は、我われマーケティング部の立場上も、大きな勝負が必要だったからね」

A「でも……」

D「A課長、今回は値段も手ごろだし、モノは悪くないんだから、広告で冒険する必要もないさ。君は広告担当だからどうしても広告にこだわるけど、もっと全体を見る必要があるよ。ここは地道にいこう。まあ、僕の経験を信じてくれ。最終的に責任をとるのは僕なんだし、ここであまり揉めるほどのことじゃないさ」

A、B、C「(まあ、これまでにも結果を出してきた部長がそう言うなら仕方ないか…)」

 数ヵ月後、件の新商品が発売になったが、売れ行きは芳しいものではなかった。

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嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]

東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社、主に出版、カリキュラム設計、コンテンツ開発、ライセンシングなどを担当する。現在は出版、情報発信を担当。累計120万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」や、「グロービスの実感するMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。
グロービス経営大学院や企業研修においてビジネスプラン、事業創造、管理会計、定量分析、経営戦略、マーケティングなどの講師も務める。また、オンライン経営情報誌 GLOBIS.JPなどで、さまざまな情報発信活動を行っている。


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ビジネスパーソンが日常生活やビジネスの現場で陥りがちな思考の罠。そんな罠になぜ人ははまってしまうのか――。その謎と罠に陥らない方法に迫ります。

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