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世界最大級のITイベントで
システム管理者が主役を務めた理由

――セールスフォース・ドットコム 「Dreamforce '17」現地報告

ダイヤモンドIT&ビジネス
【第161回】 2017年11月14日
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トレイルブレイザーは
ステークホルダー

 なぜ、セールスフォースはシステム管理者を盛り立てるのか。それは、月額課金というクラウドビジネスの構造が影響している。クラウドサービスのビジネスを単純に式にしてみると

年間売上=アカウントの月額料金×アカウント数×12

 である。月額1万円×100万ユーザーなら、年間売上1200憶円のビジネスだ。一方、顧客側から見ると、機能が向上してもアカウント単価が何倍にも値上げされるようなクラウドサービスは利用できない。つまりベンダー側は単価を何倍にも上げていく戦略は取れないから、売上を伸ばすにはアカウント数を増やすしかない。

 最も都合がいいのが、少人数で起業したベンチャーがクラウドを採用し、その企業が急成長して社員数とともにアカウントが増えることだ。業務システムとして自動的にアカウントが増えるわけだから、これほどうまみのある話はない。セールスフォースが「顧客企業の成長が同社成長の原動力」と言うのは、綺麗ごとではなくて、リアルにビジネス構造そのものなのである。

 ただし、このモデルは顧客に気に入られて、使い続けてもらうことが前提である。解約は極力減らさなければ事業が成り立たない。

 したがって顧客の利用状況を知ることが非常に重要である。同社では日頃から、顧客ごとにサービスの利用傾向を分析した「プロペンシティ・スコア」を作り、「サービスの使い込み度合」をモニターしている。スコアが高い顧客にはさらに高機能なオプションをアップセル、クロスセルし、逆にスコアが低ければ、サービス部門の担当者が電話やメールでアプローチして、何か問題がないか聞き出し、利用を促すことで解約を抑える。このようにアカウントの活性化に向けて、セールスフォース全社で取り込んでいる。

 ただし、スコアに現れてからでは手遅れの場合もある。そこで、同社が利用活性化のターゲットとして重要視しているのがシステム管理者なのだ。彼らは新しい機能を現場へ周知し、利用を働き掛ける一方で、現場ユーザーからシステムの問題を聞いて対処する。最前線でセールスフォースのすべての面倒を見ている立場だからである。管理者が気持ちよく仕事できるよう情報提供し、管理者同士のネットワークを作ってレベルアップしてもらうことが重要である。

 そしてドリームフォースは、その支援活動の集大成となるイベントだ。冒頭で紹介したヘレラ氏のような、使い手のための晴れ舞台として設定されている。

 IT企業ではユーザー会の活動を支援して活用を活発化させてきた。トレイルブレイザーの活動は一見するとそれらと変わらないように思うが、「従来のIT企業のユーザーグループは、ユーザーが自発的に活動するもの。むしろベンダーは介入しないことで中立性を出している。だがセールスフォースはベンダー側でトレイルヘッドのように大規模な学習システムを作り、ユーザーに積極的にスキルアップを働きかけている。こうした取り組みは他社には存在しない」と同社関係者は語る。

 利用者へ積極的に関わることで、サービスを改善しより深く使い込んでもらおうというのが、セールスフォースの成長戦略なのである。

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