日本オラクル株式会社
常務執行役員
クラウド・アプリケーション事業統括
ERP/EPMクラウド事業本部長
桐生 卓 氏

大学卒業後、大手外資系アプリケーションベンダーに入社。2009年日本オラクルに入社し、30代で執行役員としてFusion Middleware事業統括本部長に就任。2015年より常務執行役員クラウド・アプリケーション事業統括ERP/EPMクラウド統括本部長として、SaaS事業戦略を牽引している。

松本:そうした意味では、課題自体が15年くらい前と何ら変わっていないという気もしますね。これは、早くからグローバル市場に展開してきた、国内のある大手製造業の例ですが、その企業では最近まで欧州拠点における商品ごとの利益率がよく見えていないという状況だったのです。見方を変えれば、そんな状況でもその企業は欧州市場で利益を上げてきたわけで、そうした観点ではプロダクト自体は非常に力を持っているわけです。

桐生:確かにそういったケースもよく見受けられますね。もっとも、そうした企業においても、わかりやすい例でいえば、勘定科目の体系などは最適化されていて、財務会計的なビューは捉えられるようになっている。ところが、いざ製品ごとの損益を把握しようとすると、製品マスターや部品表へとさかのぼっていくためのコード体系の整備が不十分だったりすることが多いようです。つまり、そういう課題が意識されるようになってきた中で、システムの見直しの動きも出てきているものと思います。オラクルとしても、現在進行しているそのような動きに合わせて、15年前には実現できなかった、本来ERPにおいて実現されるべき世界を作り上げていきたいという思いがあります。

ビジネスのカルチャーに起因する
海外企業と日本企業の“溝”を埋める

―― 一方で、意思決定に時間を要するという問題は、仕組みの問題に加えて、日本企業におけるビジネスそのものの体質に帰するものともいえそうですね。

松本:そうした問題は、ガバナンスとか、組織体制、さらにはシステムといったものだけでは埋め切れない、海外企業と日本企業の間の"溝"だといえるかもしれません。例えば外資系の企業であれば、勘定科目の話もしかり、KPIの話もしかりですが、それらのデータは意思決定のための1つのインプットに過ぎず、意思決定自体はそうしたデータをもとに別次元で行うというのが一般的です。日本企業の場合には、あくまでデータにこだわり、その完全性、網羅性を担保できなければ、意思決定もおぼつかないというケースも多いのではないでしょうか。

桐生:同じ考えです。潔癖な国民性からくるのでしょうか、例えば管理会計のような世界でも、おおよその傾向を捉えるというスタンスではなく、あくまでも厳密な数字を求めて、曖昧さを受け入れられないという企業が多いようですね。システムについても堅牢というか、非常に“堅い”システムを構築して、それをグローバル展開しようとする。海外の現地で採用したローカルスタッフからすれば、ちょっと意図がわからないといったことにもなってしまうようです。そのあたりが日本企業のグローバル展開における1つの障壁になっているともいえそうですね。

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