「お前、リレーならメダル狙えるんちゃう?」

小林:歴戦の強者の投資家たちからのフィードバックで面白かったのが、自分の立ち位置を他社と差別化して説明することを求められ続けること。自分たちのユニークさの新たな一面を知るきっかけになりました。

 たとえば最初、「日本の国体で3位です」みたいな話をすると、「お前たいして速くないやろ」って言われる。けれど、よくよく話してるうちに「実はリレーはうまいんちゃうか?」ってことが浮かび上がってくる。「リレーならメダル取れるんちゃうか」と思ってリレーの練習をしていたら、そのうち本当にメダル取っちゃった、みたいなね。「業績、上がんの?下がんの?」といった会話とはわけが違う。日本の場合、財市場だけで見てしまいがちやけど、資本市場でいろんな会社を見てるほうは、どこに差があるかっていうのをよく見てらっしゃるよね。

村上:スタートアップではニッチ市場を攻めて、スケールする前は大手との競争にさらされることなく収益が上がるケースもあって、クオリティが良ければ利益が出て上場できてしまうこともあるけれど、一方で上場後の資本市場が本当に求めているのはスケールするか否か。上場すると小さな市場のニッチ戦略だけだと厳しくなる。かと言って大きな市場を狙い出すと、大手との競争に真正面からぶつかる。相手の戦力との相対感やユニークネス、相対的な差別化要因がとても重要になる。

 投資家は大多数の企業経営者の話を聞いているわけだから、相対的な目を持っている可能性が高い。一方、経営者のほうはどうしても自分たちの事業は自分が一番分かっているという基準で考えてしまいがちではある。
もちろん、自社の事業を深く理解しておくことは経営者として非常に重要なポイントだけれど、ビジネスには自社だけではなく、市場と競合がついて回るということも忘れちゃいけません。

*次回【ポストIPOについて Vol.6】「非上場会社のほうがガバナンスが利いてしまうのはなぜか」 に続きます。
*本記事は、株式公開後も精力的に発展を目指す“ポストIPO・スタートアップ”を応援するシニフィアンのオウンドメディア「Signifiant Style」で2017年9月18日に掲載された内容です。

優れた投資家はユニークさを問い、<br />残念な投資家は業績予想を問う<br />【ポストIPOについて Vol.5】朝倉祐介  シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県西宮市出身。競馬騎手養成学校、競走馬の育成業務を経て東京大学法学部を卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。東京大学在学中に設立したネイキッドテクノロジーに復帰、代表に就任。ミクシィ社への売却に伴い同社に入社後、代表取締役社長兼CEOに就任。業績の回復を機に退任後、スタンフォード大学客員研究員等を経て、政策研究大学院大学客員研究員。ラクスル株式会社社外取締役。Tokyo Founders Fundパートナー。


優れた投資家はユニークさを問い、<br />残念な投資家は業績予想を問う<br />【ポストIPOについて Vol.5】村上 誠典  シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県姫路市出身。東京大学にて小型衛星開発、衛星の自律制御・軌道工学に関わる。同大学院に進学後、宇宙科学研究所(現JAXA)にて「はやぶさ」「イカロス」等の基礎研究を担当。ゴールドマン・サックスに入社後、同東京・ロンドンの投資銀行部門にて14年間に渡り日欧米・新興国等の多様なステージ・文化の企業に関わる。IT・通信・インターネット・メディアや民生・総合電機を中心に幅広い業界の投資案件、M&A、資金調達業務に従事。


優れた投資家はユニークさを問い、<br />残念な投資家は業績予想を問う<br />【ポストIPOについて Vol.5】小林 賢治  シニフィアン株式会社共同代表
兵庫県加古川市出身。東京大学大学院人文社会系研究科美学藝術学にて「西洋音楽における演奏」を研究。在学中にオーケストラを創設し、自らもフルート奏者として活動。卒業後、株式会社コーポレイトディレクションに入社し経営コンサルティングに従事。その後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、取締役・執行役員としてソーシャルゲーム事業、海外展開、人事、経営企画・IRなど、事業部門からコーポレートまで幅広い領域を統括する。