東芝の解体が社員にとって「幸せ」かもしれない理由東芝は解体によって低収益企業になる。しかし、投資家はいざ知らず、社員にとって解体後の東芝は「悪くない会社」になるかもしれない Photo by Hiroyuki Oya

テレビ事業まで中国に売却
東芝は低収益企業になる

 東芝が11月14日、赤字が続くテレビ事業子会社を中国電機大手のハイセンスグループ(海信集団)に売却すると発表した。レグザブランドのテレビを製造販売している東芝映像ソリューションを、レグザのブランドとともに約129億円で売却するという内容だ。売却のめどは来年2月末頃だという。

 これまで東芝は経営の健全化を目指し、白物家電事業を別の中国家電大手に、成長が期待された医療機器事業をキヤノンに売却した。一番稼いでいる半導体メモリ事業も日米韓の企業連合へ売却することになっている。それに続いてのテレビ事業売却だ。

 11月上旬に発表された東芝の2017年9月中間連結決算(今年度上半期の業績)は、売上高2兆3900億円、営業利益2318億円というものだった。収益を牽引したストレージ&デバイスソリューション部門の中で、売却を予定している半導体メモリ事業の営業利益は2050億円と9割を占める。もし半導体メモリがなくなると、残された東芝はまったく収益があがらない会社になる予定だ。

「まったく収益があがらない」というと怒られてしまうかもしれないが、単純計算で稼ぎ頭の半導体メモリを引き算すれば半期売上高1.8兆円、営業利益268億円という低収益企業になってしまう。

 残った事業群は低収益事業ばかりで、半期で100億円台の営業利益を稼げているのは3事業だけ。それらは、半導体メモリと同じストレージ&デバイスソリューション部門におけるハードディスク事業とデバイス事業、リテール&プリンティングソリューション部門(東芝テック)における小売業向けPOSレジなどの事業だ。

 あとは、数十億円の利益をようやく稼いでいるような部門しかなく、先日大幅な業績回復を見せたソニーの画像センサのように、年間1000億円を稼いでくれそうな事業はもはや残されていない。

 だから、「恒常的な赤字で引き取り手がある事業ならば、引き取ってもらいたい」というのが経営陣の本音だろう。その意味では、半期で47億円の赤字を出していたレグザをハイセンスが129億円で引き取ってくれるというのは、渡りに船という取引だったろう。