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吉田恒のデータが語る為替の法則

日本が今、介入を決断するのは難しいが、
それでも米ドル高・円安へ反転の可能性

吉田 恒
【第168回】 2011年11月23日
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 10月31日(月)に行われた円売り介入の直後に80円近くまで急反発した米ドル/円でしたが、あれから3週間ほどが経過し、介入前の水準まで戻ってきました。

 米ドル/円は再び、75円割れを目指すような展開となるのでしょうか? それとも、再度の介入などをきっかけとして、米ドル高・円安となるのでしょうか?

 結論を言うと、短期的には、日本の当局が介入を決断することはとても難しいと思います。

 ただ、達観するならば、介入よりも重要なのはリスク回避の行方であり、その点では、私は悲観的に見ていません。その見方どおりならば、金利低下、米ドル安・円高とはならないと思っています。

「失敗介入」の効果は3週間で切れている

 「介入の有効期限」といった観点からすると、そろそろ効果が切れて、たとえば、米ドルが75円台の最安値更新を今週あたりにトライするのは当然なのかもしれません。

 「資料1」のように、2010年9月以降に行われた4回の円売り介入のうち、今回を除く3回の中で、昨年9月と今年8月の2回は、介入当日で米ドル高・円安の流れは止まってしまいました。今年3月の大震災後に行われた介入だけ、その翌日以降も米ドル高・円安が続いたのです。

 その意味では、2010年9月以降に行われた3回の介入の中で、成功例は今年3月だけで、昨年9月と今年8月の2回は「失敗介入」だったという言い方もできるでしょう。

 しかも、この2回の「失敗介入」では、その3週間後に介入した水準をブレイクし、米ドル安・円高がさらに進んで新値更新となっていました。

資料1

 

 今回、10月31日(月)に行われた介入も、その当日に米ドル高・円安の流れが止まった形となっており、その意味では、3回目の「失敗介入」の様相となっています。

 ここまでご説明してきたように、直近2回の「失敗介入」では3週間後に介入した水準を米ドルが下回っていました。今回の場合も、介入効果がこのあたりで切れてきて、米ドルが今週中に75円台をトライしてもおかしくないでしょう。

円の大幅買い越しが解消された状況では、介入は難しいか

 それでは、本当にそうなってしまうのでしょうか? すでに76円台まで円高・米ドル安に戻ってきていますが、昨年8月以降、5度目の円売り介入は行われないのでしょうか?

 この点について、足元の76円台で円売り介入が行われるのかと言えば、ちょっと微妙だと見ています。

 介入はマーケットの意表をつく形で、「サプライズ」が重要とされています。現状で介入が行われるとしても、効果があるのか疑わしいと思うのです。

 直近4回の介入は、マーケットが米ドル売り・円買いにかなり傾斜しているところを狙った形となっていました。

 「資料2」で投機筋の円のポジションを見ると、そのうちの3回が、円の買い越しが5万枚前後まで膨れ上がり、円買い・米ドル売りの限界圏に達していた状況下で行われた介入だったのです。

 介入の影響力に限界があるとされる中で、効果的な介入を考えるならば、マーケットが米ドル売り・円買いの限界圏に達し、さらなる米ドル売りの余力がなく、米ドルの買い戻しが広がりやすい状況を狙うというのは理解できるところでしょう。

資料2

 

 ところで、そのマーケットのポジションですが、ここで参考にしているCFTC統計で11月15日(火)現在の円の買い越しを見ると、3万枚台でした。

 この統計を見るかぎり、足元でマーケットが米ドル売り・円買いの限界圏に達しているかは微妙です。したがって、日本の当局が介入に動くとしても判断に迷うところではないでしょうか?

 また、この11月に入ってからも、日本政府・日銀が非公式な介入、いわゆる「覆面介入」を続けているとの見方が多くあります。そうだとしても、その「覆面」をはいで、介入再開を公式に確認するかと言えば、判断に迷うところではないでしょうか?

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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