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BIG THINK presents[緊急特集]金融危機後の世界経済

サマーズ元米国財務長官「リーマン破綻の本当の教訓」(テキスト版)

【第10回】 2008年11月20日
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リーマンブラザーズは上位3位にも入っていない投資銀行であったにも関わらず、その破綻は金融市場を事実上の機能不全に陥れた。ローレンス・サマーズ元財務長官は、証券取引所もその対象に含めて、システミックな安全性規制とも呼ぶべき新しい規制体系を急ぎ整備すべきと説く(テキスト版)。

サマーズ:その一つは恐らく、いや確実に、個々の金融機関に対する裁量的な規制でしょう。今回の出来事の流れを追っていくと、場合によっては、個々の金融機関が行った選択は、あまりにもリスクに対して鈍感でまったく驚かされます。こういうことをもっと厳しく監視・警戒すべきではなかったか、(なぜ)それができなかったのかと思わされます。

 しかし私が思うに、もっと深い緊急課題、そして金融規制に関して十分に考え抜かれていない緊急課題は、システミックな安定性に関する規制とでも呼ぶべきものだと思います。そこで認識されるのは、私たちが最終的に気に掛けているのは、ある特定の金融機関の株主や従業員ではなく、大きな実体経済に起きようとしていること、つまり失業率や、ボブ(ロバート・マートン教授)が言う数兆ドルの損失という形で把握されるものだということです。

 システミックな安定性については、これに注目しようとするなら、考える材料となる例がいくつもあります。

 ある金融機関の問題がシステム全体の問題とならないようにするためには、どのような決済システムを用意するのか。私たちは、ある重要なことを学んだのですが……。

モデレータ:決済システムというと、従来の決済システムの例といえば、たとえば……。

ラリー:証券取引所は昔ながらの決済システムの例ですね。しかし……。

モデレータ:ええ、証券取引所は決済システムの例ですね。

サマーズ:つまり、もし株を他の人と取引する場合に、その人に信用力があり約束を果たすということだけを当てにしなければならないとすれば、株式市場は、長年にわたって、これほどうまくは機能しなかったでしょう。証券取引所というのは、(決済システムの)一つの例です。

モデレータ:分かりました。

ラリー:第二の例は、さまざまな法的・技術的な問題が絡んでいるのですが、破綻に際してシステムの安全を保つことです。リーマンブラザーズは米国最大の金融機関ではありませんでした。上位5位までの金融機関の一つでもありませんでした。しかしそれでも、リーマンの破綻は激変ともいえる結果を招きました。

 一つの金融機関が破綻し、さまざまな関係が含まれていても、その破綻が私たちの目にしたようなシステム全体に及ぶ結果につながらないような方法は見つけられないのでしょうか。それがシステムにとって重要でもあり、その一部である金融機関にとっても重要です。

 というのも、そういう方法を見つけられず、破綻にまったく対応できないシステムのままでいるならば、そのシステムでは、私たちはリスクを大幅に引き下げざるをえなくなり、それがひいては、米国経済の活力という点で一連の影響を及ぼすだろうからです。

*モデレータは、ブーズ&カンパニーのチーフマーケティング&ナレッジオフィサー、トーマス・スチュワート氏

・動画版はこちらをご覧ください。

ローレンス・サマーズ(Lawrence Summers)
1954年生まれ。16歳でMIT(マサチューセッツ工科大学)入学。28歳の史上最年少でハーバード大学教授に就任。世界銀行のチーフエコノミストなどを経て、1999年にロバート・ルービンの後任として米国財務長官に就任(2001年退任)。2001~2006年ハーバード大学学長。現在はハーバード大学教授。

Big Thinkとは?
ハーバード大学出身のピーター・ホプキンス氏が2008年1月に、ローレンス・サマーズ元米国財務長官らの協力を得て、立ち上げた“知識人”のための討論サイト。著名人の動画インタビューを中心に、政治から経済、科学、文化など幅広いテーマを取り扱っている。ダイヤモンド・オンラインでは今後、Big Thinkのコンテンツを動画とテキストで定期的に掲載する。

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