アラブ 2017年11月24日

教えて! 尚子先生
ロヒンギャ問題とは何ですか?【中東・イスラム初級講座・第44回】

発売即重版決定! 幸福の「資本」論(橘玲著) 好評発売中

最近、メディアでも取り上げられることの多い「ロヒンギャ問題」。イスラム教を信仰するミャンマーの少数民族ロヒンギャにいま何が起こり、なぜあれほどの難民が発生したのか? 日本では珍しい女性の中東研究家として活躍する岩永尚子先生がわかりやすく説明します。

 60万人を超えるといわれる難民が発生した事件の発端は、今年8月25日にロヒンギャ(Rohingya people)の武装勢力が、警察などへの攻撃を行なったことでした。ミャンマー軍の治安部隊はその報復として、武装勢力だけでなく、ロヒンギャの人々に対しても容赦なく掃討作戦を行なったために、難民が大量に発生しているのです。

 60万人と聞くと「すごい数……」とは感じますが、なかなか実感がわきません。どれくらいになるのか、日本で人口60万人規模の都市を調べてみました。すると、埼玉県の川口市(約58万人)、鹿児島市(約60万人)、千葉県の船橋市(約62万人)などが該当していました。これらの都市の全員、赤ちゃんから老人に至るまですべてが、難民となっていたのだと考えると、あらためて壮絶さが実感できるかと思います。

 一連のミャンマー軍の報復について、国連の人権高等弁務官は、「民族浄化の典型例だ」と非難していますが、なぜ、このような悲惨な状況になっているのでしょうか? そもそもロヒンギャとは、どのような人々なのでしょう? ミャンマーの歴史を振りかえりつつ、彼らがどのように位置づけられているのかなどについて説明し、現在の状況についてまとめてみたいと思います。

イスラム教を信仰する少数派

 そもそもロヒンギャとはどのような人々なのでしょうか? おもにロヒンギャはミャンマー西部、バングラデシュと国境を接しているラカイン州に居住しています。人口は正確に把握されていませんが、100万~130万人程度(世界中では約200万人ぐらい)といわれています。

 彼らはベンガル地方(現在のバングラデシュ)に起源を持ち、ロヒンギャ語(ベンガル語のチッタゴン方言のひとつ)を話しています。ロヒンギャ語では、ミャンマーの人々の約7割が話すというビルマ語とは、相互に理解しあうことは困難です。ロヒンギャ語の書き文字は、アラビア文字をもとに、ビルマ文字やウルドゥー文字も利用しつつ、1980年代になってから確立されたそうです。
 
 また、彼らはミャンマーの他の人々とは異なった身体的特徴を有しています。やや浅黒い肌の色、そして彫の深い顔立ち(私たち日本人がインド人やバングラデシュ人といわれて思いつくような顔立ち)をしています。
 
 つまり、ロヒンギャはミャンマーの多数派からみると、言語からも見た目からも、明らかに「他者」と感じられる人々なのです。
 
 さらに、ミャンマーではおおよそ9割の人が仏教徒だといわれています。ところが、ロヒンギャは仏教徒ではありません。ミャンマーの少数民族の中にはイギリス植民地下にキリスト教徒となった人々の例もありますが、ロヒンギャの人々はイスラム教を信仰する少数派です。

 ロヒンギャが「ロヒンギャ」という語を用い、「民族」として文書史料に登場するのは1950年以降だといわれています。「民族」としての自覚が芽生えたのは最近であったとしても、ロヒンギャの祖先たちと考えられるイスラム教徒たちは、15世紀にはすでに現在の居住地域に存在していたことがわかっています。

ミャンマー最大の都市ヤンゴン(Photo:©Alt Invest Com)

作家・橘玲の切れ味鋭い見解が毎週届く!
有料メルマガの
無料お試し購読受付中!
お試しはこちら

出版即重版決定! 橘玲氏の最新刊!2017年6月14日発売!
幸福の「資本」論|橘玲著 幸福の「資本」論 重版決定!
橘玲著

あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」。あなたが目指すべき人生は?
定価:1,500円(+税) 発行:ダイヤモンド社
購入はコチラ!
世の中の仕組みと人生のデザイン|橘玲のメルマガ配信中! 20日間無料 ザイでしか読めない!橘玲のメルマガ「世の中の仕組みと人生のデザイン」も好評配信中!
月額864円(税込)
いますぐ試す(20日間無料)

バックナンバー

»関連記事一覧を見る

海外投資必勝マニュアル&本

海外投資のノウハウが凝縮! ここで紹介しているコンテンツ、書籍はすべて、ネットから購入が可能です。さらに「海外投資実践マニュアル」は「海外投資を楽しむ会」の会員になれば割引価格で購入可能です。

作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
発売即重版決定! 橘玲の最新刊【幸福の「資本」論】発売!
橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
橘玲×ZAiONLINE海外投資の歩き方
作家・橘玲がメルマガ配信を開始!
subcolumn下影

ページのトップに戻る

本WEBサイトに掲載している全ての記事およびデータについて、その情報源の正確性・確実性・適時性を保証したものではありません。本サイトの提供情報を利用することで被った被害について、当社および情報提供元は一切の責任を負いませ ん。万一、本サイトの提供情報の内容に誤りがあった場合でも、当社および情報提供元は一切責任を負いません。本サイトからアクセス可能な、第三者が運営するサイトのアドレスおよび掲載内容の正確性についても保証するものではなく、このような第三者サイトの利用による損害について、当社は一切責任を負いません。また、併せて下段の「プライバシーポリシー・著作権」もご確認ください。