第4ステップ:「決意」をかためる

 新しいアイデアと古いアイデアは対照的だ。シュルツも新しいアイデアが浮かんだとたん、「スターバックスには、大切な何かが欠けていた」と気づいている。基本的に、新しく浮かんだアイデアは良いものであり、古いアイデアは悪いものだ。

 だが従来のアイデアが間違っていることを受け入れるのは難しい。それまでの考え方や目標をあきらめるのは、敗北のように感じることがある。

 シュルツの場合、新しいアイデアは組織への反抗も意味することになった。ミラノ出張の目的は、店舗で使う什器を展示会で探すことだった。それなのに、シュルツは上司に、どの什器を購入すべきかでなく、「スターバックスのビジョンと目標は間違っている。ビジネスを根本から変革する必要がある」と伝えなければならなくなった。

 そこで次に、第7感の4つ目のステップである「決意」が来る。これは、アイデアを実現させると固く決心することだ。

 第7感によって素晴らしいアイデアが生じたとき、私たちは「何をすればいいかわかった」ではなく、「何をすればいいかわかった。ぜひそれをやってみたい」と思う。

 アイデアによって、心にスイッチが入る。この「決意」という最後の重要なステップがあるからこそ、私たちはアイデアを実現させることができる。

「本当の答え」が浮かぶと体が動く

 シュルツのケースでも、最初から心に火がついたことがわかる――「すさまじく直接的で、リアルだった。私は震えていた」。シュルツはすぐにでもこのアイデアを実行したかった。アイデアを思いつく前、コーヒーに対してシュルツが抱いていたのはたんなる「関心」でしかなかった。

 だが突然のひらめきによって、関心は「情熱」に変わった。その情熱は、決意を胸にアイデアを追い求めるための燃料になった。

 このアイデアを実現させる過程で、シュルツは多くの壁に直面した。その分、固い決意が必要だった。

 まず、アメリカに戻って新たな計画を提案したところ、上司に却下された。シュルツは、スターバックスからの独立を考え始めた。しかし、そこには大きなリスクがあった。会社を立ち上げた経験もなかった。シュルツはアイデアをあきらめかけた。「数ヵ月間、私は不安で身動きがとれなくなり、悶々としていた」

 ある週末、シュルツはバスケットボールをしていたときに、スコット・グリーンバーグという人物に会った。出会う人すべてに、くだんのアイデアを語っていたシュルツは、当然のようにグリーンバーグにもそれを説明した。

 企業弁護士で、専門的な知識を持っていたグリーンバーグは、シュルツに起業資金を集める方法と、それがとくに難しくはないということを教えてくれた。突然、シュルツには進むべき道が見えた。それは二度目のひらめきだった。

 グリーンバーグの専門知識は「歴史の先例」だった。シュルツには「オープンマインド」があったので、この新しい材料を既存のアイデアと組み合わせることができた。シュルツは、軌道修正した新しいアイデアの実現のために、もう一度「決意」を固めた。

「これは人生最大のチャンスだ。(中略)安全地帯から飛び出してリスクをとらず、このままじっとして時間を無駄にしてしまえば、私はこのチャンスを逃してしまう」

 シュルツはスターバックスを退社して起業した。事業は成功し、数年後にはスターバックス・チェーンを買収するまでに成長した。