放送大学へ行け

「そうか、わかった。そしたら、まず大学やな」

「え、大学ですか?オレ、理容師ですよ。学歴いるんすか?」

「お前、たった今、何言うた?『オレの言ったことを必ずやること。どうしてやるのかは聞かないこと』が条件や言うたら、『はい』言うたやろ」

「たしかに」

「忙しくても、金がなくても行ける社会人のための大学がある。放送大学、言うんや。そこにあるもんで好きなことを勉強したらいい。後期の入学手続きにはまだ間に合うやろ。1回調べてみ」

「はい」

「『ミリオンダラー・ベイビー』の掟はな、言われたことをやる、どうしてやるかも聞かない」

オレが心配そうな顔をしているのに気づいたのだろう。

「心配する必要はない。小さな組織に必要なのは、お金やなくて考え方なんや

立三さんは、それだけ言うと、お金を払い、「今度から定休日に来るようにするわ」と言って店を出ていった。

オレは、ピーナッツを買いにスーパーに向かった。

●スタート時の実績(月間)
来客数:400人
稼働率:22.9%
売上:200万円

(つづく)

●著者:さかはらあつし
作家、映画監督、経営コンサルタント 1966年、京都生まれ。京都大学経済学部卒業。(株)電通を経て渡米し、カリフォルニア大学バークレー校にて経営大学院にて修士号(MBA)取得。シリコンバレーで音声認識技術を用いた言語能力試験などを行うベンチャー企業に参加。大学院在学中にアソシエートプロデューサーとして参加した短編映画『おはぎ』が、2001年カンヌ国際映画祭短編部門でパルムドール(最高賞)受賞。帰国後、経営コンサルティング会社を経て、(株)Good Peopleを設立。キャラクターの世界観構築など、経営学や経済学だけでなく、物語生成の理論、創造技法や学習技法を駆使した経営支援、経営者教育を手がけている。著書は、『プロアクティブ学習革命』(イースト・プレス)、『次世代へ送る〈絵解き〉社会原理序説』(dZERO)ほか。映画は、初監督作品の長編ドキュメンタリー『AGANAI』の公開に向けて奮闘中。京都在住。