「競争しない競争戦略」に転換したデータベースサービス企業ランドスケイプデータベースマーケティング支援のランドスケイプ。一時、事業の岐路に立たされた同社が選んだのは「競争しない」という競争戦略だった(写真提供:ランドスケイプ、以下同)

足で探さず公開情報を使った
企業情報データベースの成功

 ランドスケイプは、1990年に設立されたデータベースマーケティング支援の会社である。社長の福富七海氏は、前職のカルチュア・コンビニエンス・クラブでTポイントの原型やデータベースの業務に携わっていた。

 ランドスケイプは企業理念として、「固有名詞の一元化により、社会に効率と安全とプライバシーを提供する」ことを掲げている。ちなみに社名は、「社会の風景になること」を目指して命名された。

 創業当初は、個人向けのダイレクトメール、データベースマーケティングの会社だったが、テレマーケティングが多用されるようになったのを受けて、テレマーケティング用のシステムを作るようになった。しかし、そのテレマーケティングもeコマースに代替されるようになり、また個人情報保護に対する意識の高まりも受け、BtoCからBtoBにビジネスの舵を切った。

 同社のコアコンピタンスは顧客データベースであったが、BtoBの顧客データベース業には、帝国データバンクと東京商工リサーチというガリバーがおり、彼らは多くの調査員を抱えて足でデータを集め、圧倒的な企業情報を蓄積していた。ただ、主な需要は企業の信用調査目的であるため、顧客は一定規模以上の民間企業が中心で、また事業所名の「名寄せ」は得意とは言えなかった。

 そこでランドスケイプは、足でかせぐのではなく、登記簿、電話帳、商工会データ、ウェブなどの公開情報からデータを集め、社名、住所、統廃合などを確認してデータをクリーニングし、さらに名寄せすることを考えた。CDI(Customer Data Integration:顧客データ一元化)と呼ばれる、データの信頼性を高める仕組みを武器にビジネスができるのではないかと、考えたのである。

 こうしてCDI事業を始め、同社の企業情報データベースは820万件と、日本最大となった。企業レベルだけでなく、事業所レベルのデータも持ち、企業名、個人名の「名寄せ」済みのデータであることが特長である。日本全国の拠点(本社と事業所)に付与した独自のLBC(Linkage Business Code)により、帝国データバンクなどによる与信調査の依頼の少ない事業所、たとえば営業所、官公庁、非営利組織までもカバーしている。