「お約束」「定番」のシリーズを作れば…

ところが、この「ご当地映画」は、「ご当地の、ご当地の人による、ご当地のための映画」の様相を呈することがしばしばで、それが問題にもなります。

「ご当地」は地方都市の場合が多く、「ご当地」にある映画館の数も限られていて、「ご当地以外」の人には興味が薄いため、その多くが興業的に赤字になってしまうのです。

遊牧民のように、次々と「ご当地」を回って映画を作る人も少なくありません。

一般的に「映画のマーケティング上の挑戦」と言えば、観客にその映画が「どんな映画なのか」「何についての映画なのか」を理解してもらい、興味を持ってもらい、見に来てもらわなければならないのですが、最初の「どんな映画なのか」を理解してもらう作業が「ご当地映画」では極端に難しいのです。

具体的なやり方としては「続編を作る」「シリーズ化する」わけです。

これによって「一発勝負」の上に「一回きり」という厳しい戦いを避け、一回の成功をブランド資産としてフル活用することを試みるのです。

するとビジネスとして安定しやすくなります。

非常に上手く考えられた「ご当地映画」だと感心するのは、山田洋次監督の「男はつらいよ」の寅さんシリーズです。

ロケ地が変わり、マドンナも変わるので、観客を飽きさせず、かつ世界観は一定で、マーケティングの効率が非常にいいのです。

そこで、思いついたのが、「寅さんのようなキャラクターをした経営コンサルタントが日本全国を漫遊して縁あった地元の企業を助けるものの、マドンナにはフラれ、その地をあとにする」というストーリーです。

こうした、ある種、「お約束」「定番」のシリーズを作ることができれば、

・映画を楽しんでもらえる
・経営や経済についての学びがある
・本を読んで勉強してみようと思ってもらえる
・その地方が望んでいる産業を紹介できる
・映画が世界に出れば、インバウンドのビジネス促進にもなる

ということが可能になると思います。