見るからにデップリとした肥満に対し、見た目はスレンダーでBMI値も正常範囲。こうした人も安心はできない。“隠れ肥満”かもしれない。内臓脂肪はとんでもない悪さをしているのだ。 

 食事で摂った糖分、脂質が燃焼し切れずに余ると、中性脂肪に合成されて脂肪細胞として蓄積されることはよくご存知だろう。

 脂肪細胞について、以前は、1度増えた数は元に戻らないと考えられていた。だが、最近の研究で、脂肪の蓄積が減れば脂肪細胞の分裂は止まり、細胞数も減少することが判明した。これが意味するところはダイエットは可能ということ。そればかりか、脂肪細胞自体が一種の食欲抑制ホルモンを分泌していることがわかってきた。

 このメカニズムを、工藤一彦・慶友生活習慣病研究所所長は次のように説明する。「人の体を維持するために、脳内には食欲をつかさどる中枢神経があって、満腹、空腹の信号を出しているが、じつは脂肪細胞自体が、満腹中枢を刺激するホルモン、アディポサイトカイン(レプチン)という物質を分泌している。男女とも、体脂肪率が25%を超えるあたりから分泌される点が重要」

 つまり、体脂肪を正常に保つ働きのこの分泌機能になんらかの異常が生じると、食欲抑制の働きが鈍り、さまざまな悪影響を及ぼす。レプチンやアディポネクチンといった善玉サイトカイン(生理活性物質)は、肥満や動脈硬化、心臓病の抑制に役立っているが、脂肪細胞が増加かつ肥大化すると、それらの分泌が減り、逆に悪玉サイトカインの分泌が増えるという。

 肥満の権威である前出の松澤佑次氏も、「アディポネクチンはいわば体内の消防隊で、インスリンの働きや血圧、血管の異常を防いでいる。しかし、内臓脂肪がたまった状態では、その効用が失われる」と説明する。

表1
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