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外科医のつぶやき

“創造的破壊”を容易に起こすガン細胞は
構造改革のプロ

柴田 高
【第35回】

 数ヶ月前、ある証券会社の担当者の方が数名で私の会社を尋ねてこられた。「このたび我が社と監査法人が主催する経営セミナーで、外科医でもあった社長にご講演をいただけないかと思いまして」といきなりの講演依頼の申し出であった。

 「H5N1新型インフルエンザでは、何度か講演させていただきましたが、今回は、経営に関する講演ですよね」と私。

 「最近は、企業が生き残るためには株式上場だけでなく、構造改革が問われています。特に老舗であった御社はここ数年で大きく変わり、話題を呼んでいますので、ぜひともお願いしたいのですが」と担当者。

 確かにその言葉には嘘は無かった。7年前、私はT病院解剖室で二酸化塩素ゲルの浮遊菌テストを行っていた。そして転職後は家業の医薬品メーカーで、既存事業の再生と新規事業に邁進した。そして構造改革と組織基盤の強化により、我が社は株式公開を達成できた。さらに、新規の感染管理事業は急成長し、日本二酸化塩素工業会という業界団体を立ち上げるにいたった。

 「株式上場はゴールではなく土俵に上がったようなものです。これからの結果が全てですから」と答える私。

 「いえいえ、今までの過程で構造改革などどのように考え、決断、実行したかの苦労話をお聞かせいただければ…」と担当者。

 講演依頼を断れなかった私が、まずこれまでのことを思い浮かべているとシュンペーターの“創造的破壊”という言葉が脳裏に浮かんだ。そして、九州へ単身で赴任され、医局改革に成功された私の指導教官であったO先生のことも。

 「私は九州に骨を埋めるつもりです。そして、部下は誰一人連れて行くつもりはありません。それぞれの立場で日本の医学界をリードしていきましょう」と第二外科酵素科学研究室の送別会でO先生はご挨拶をされた。輝かしい研究成果や外科臨床の実績である遺産を大阪の医局に置いたまま、新たなる挑戦をお一人で始められる意気込みと潔さに私は感銘を覚えた。「別の組織へ入るときは裸一貫、一人で乗り込むべし」という言葉に出さないO先生の思いが私には伝わった。同時に、体内で転移するガン細胞を思い起こしていた。

 病的に組織を破壊する代名詞が“ガン”であると考えたとき、T病院時代の看護学校で“ガン”について話したことがあった。

 「皆さん、腫瘍ってどうしてできるか知っている人いますか?」と尋ねた。看護学校の女学生さんたちは大きく目を見開くも、私と目をあわすまいといっせいに目をそらす。

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柴田 高

川崎医科大学卒業後、大阪大学論文博士課程修了。日本外科学会指導医。日本消化器外科学会専門医。現在は大幸薬品社長。著書に『カリスマ外科医入門』『肝癌の熱凝固療法』がある。


外科医のつぶやき

現在は製薬会社役員である外科医師による医療エッセイ。患者の知らない医師の世界。病院の内側が覗ける、ここだけの話が満載。

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