晩秋と表現した方がいいか、それとも初冬と書いた方が正確か、と迷う11月下旬、「シルクロードの町」蘭州に数日滞在した。今年3度目の訪問だ。

 夏に快適な避暑地として、近年知名度を上げてきた同市は、冬になると寒さが厳しいだろうと身構えていたが、暖冬のせいかそれほど寒くなかった。本格的な冬の訪れはこれからだと指摘する地元の声もあったが、とにかく私が同市に滞在していた間は、寒さをそれほど感じずに済んだ。

赤い横断幕の内容に変化を感じた

 現在、空港の周辺で進められている開発区の造成工事現場では、建物の基礎を作るための杭を、土の中に打ち込む槌の音があちらこちらから聞こえる。開発区管理委員会が入る予定のオフィスビルの建設現場を視察した時、現場に掛けられていた赤い横断幕の内容に興味を覚えた。

 こうした赤い横断幕は大抵、政治的なスローガンか建設会社の社名、または安全第一といった注意書きのようなものだ。しかし、蘭州新区の工事現場で私が見た横断幕にはいずれも「労務」という文字が入っている。つまりこの工事現場で働いている労働者の一部が、労務会社の派遣によるものだとアピールしているのだ。言い換えれば、ここで働いている労働者の権利や福祉は、私たちが責任を持って保障している、と周知するための行動だと見ていいだろう。

 実際にどこまで労働関連の法規をまもっているかは分からないが、少なくともこのようにアピールしなければならないようになったことは、一つの進歩だと評価していいと思う。労働力が豊富で働き口が少ないと見られる西北の地だけに、このような労務供給の現場を目の当たりにしてすこし驚いた。つまり、人手不足時代が近づく足音がこの西北の工事現場にもこだまし始めているのだ。