日本ではあまり知られていないが、キューバは防災大国であり、「災害医療先進国」と呼ばれている。「災害大国」である日本が学ぶべきことも多いはず。折しも、筆者は『第一回日玖統合医療シンポジウム』を取材する機会があった。そこで、聞いたキューバの災害医療の優れた点などを紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

2016年のハリケーン死者数は0人!
死者の数は被害の大きさとイコールではない

「キューバでは市民防衛制度のお陰で、ハリケーンによる人的被害は最小限に抑えられています。2016年にハリケーン「マシュー」が襲来した際にも、死者は0人でした」(キューバのエヴァ・カリダド・アポダカ・ベレス医師)

 今年の7月15日に東京大学・鉄門記念講堂で開催された『第一回日玖統合医療シンポジウム』での、キューバ側パネリストの発言に、筆者は耳を疑った。

 ハリケーン「マシュー」といえば、2016年にカリブ海地域に甚大な被害をもたらした大型ハリケーンである。ハイチでは842人、アメリカ・フロリダ州で18人の生命が失われたことは記憶に新しい。そんな、凄まじいハリケーンに襲われたにもかかわらず、死者がいなかったとは!

 (単に直撃を免れただけなのでは…)

 とも考えたが、そうではなかった。

 キューバではハリケーン襲来に備え、政府の呼びかけで100万人が事前に避難していたため死者はいなかったものの、農業や食糧生産が大打撃を受け、特に、歴史的な町並みで知られるバラコアでは住宅の90%が崩壊したという。

 死者の数は、被害の大きさとイコールではないのだ。この事実からは、キューバが政策において何を最重視しているのかがよくわかる。