11
バークレー近辺のターキートロット人気スポット、インスピレーションポイント。トレイルを2.5マイル地点まで走って行って、歩いて引き返してきたので、4km走って4km歩いたことになります。景色も良いのですが起伏もあって、なかなか大変でした

 アメリカでは11月23日のサンクスギビング(感謝祭)の休暇が明けました。普段仕事場にしているWeWork Berkeleyは先週の頭から人気が少なかったのですが、原稿を書いている11月27日の月曜日は人が戻ってきました。

 先週少しご紹介したとおりに、この27日はオンラインショッピングが最も盛り上がる「サイバーマンデー」。面白いのは、オンラインショップの値引きセールだけでなく、アプリやサービスの年間購読なども割り引きになっている点。そうなることを知っていたら、最初から11月27日に諸々の購読の更新をするように照準を合わせるべきでした。

 今年の場合、11月24日がブラックマンデー、11月27日サイバーマンデーでしたが、実は11月25日土曜日には「スモールビジネスサタデー」というキャンペーンがありました。参加している地元の店舗は、店頭に青いカーペットを敷いてセールでお客さんを呼び込みます。

 このキャンペーンは2010年にAmerican Expressが始めたものです。ブラックフライデーはどうしてもデパートやチェーン店などに注目が集まりがちだし、サイバーマンデーはオンラインが主戦場。そこで地元商店をサポートしようというキャンペーンは、街の雰囲気も温かみのあるものへと変えてくれそうです。

 カード支払いを受け付けている小規模商店にとっては、America Expressは手数料の関係からか敬遠されがちで、VisaとMasterとDiscoverはOKでも、Amexはダメという飲食店も少なくありません。それでもバークレーでは、青いカーペットが随所に見られて、浸透している雰囲気を感じることができました。

米社会ではターキーはマーケティングでの重要キーワード

 サンクスギビングのシーズン、「ターキー」(七面鳥)は超重要キーワードです。Amazonはプライム会員向けに、今年傘下に収めた高級スーパーWhole Foods Marketでのターキーの割引きを展開し、オンラインショッピングの前に胃袋をつかみに行く戦略に打って出ました。

 また、以前お話を聞きに行ったキッコーマンUSAで成功したマーケティングの1つもターキー関連だったそうです。醤油を刺身や寿司以外に親しんでもらい、アメリカの食卓に入り込もうとしたときにマーケティングとして活用したのもターキーでした。

 こちらでのターキーは、5kg以上のサイズで冷凍されているものを買ってきて、冷蔵庫で3日かけて解凍し、スパイスやハーブを混ぜた塩水に丸1日漬け込むブライズという工程があります。キッコーマンはこのブライズの塩水に醤油のボトルを1本使うレシピを提案し、好評を博したそうです。

 またApple Watchでは、感謝祭の日に5km以上走るとターキーを模したバッジを獲得することができました。

 「Turkey Trot」というカルチャーで、夜のターキーを含むご馳走を前に、走ってカロリーを消費しておこう、というわけです。シリコンバレー周辺の都市でもマラソン大会が開かれていますし、距離があるトレイルがある自然公園は人で溢れかえります。ここでも、ターキー絡みのマーケティングが効いているわけですね。

セールシーズンに断捨離すべき理由

 ブラックフライデーやサイバーマンデーは、何か買うには絶好のシーズンです。しかし、週明けの月曜日、とてもそんな気分にはなっていませんでした。というのも、連休中にクローゼットの中を一掃するような断捨離を敢行したからです。

 その成果は、2つあった衣装ケースが1つになり、棚を埋め尽くしていた箱は一掃され、ケーブル類はていねいに分類され、取り出しやすいよう引き出し風のコンテナに収めることができました。非常に素晴らしい結果です。

 その過程で、次々にいっぱいになって増えていくゴミ袋を見ながら片付けていると、とてもじゃないけれど「何か買おう」という気分は消え失せていきます。そのため、せっかくのセールはすべてスルーすることになりました。

 手に入れたときと捨てるときの気分のギャップがあまりに大きく、だったらはじめから買わなければ良かったのに、という気分を味わうのは、意外にショックなものです。いや、そのときは必要だったし、それなりに使っていたはずなんですが……。

 今一度確認しておきますが、今回の片付けはやって良かった、と思います。しかし、これだけ街が消費に沸くなかで、それらに一切興味を持てなくなるのが少しさみしいというわけです。

 断捨離から街にさみしさを感じるまでの一連の流れは、おそらく12月が終わる頃には「非常に良かった」という振り返りになるはずです。できれば、来年のサンクスギビングのころまで、物が増えず、何も捨てなくて良い状態が保たれるよう、今回の原稿を買い物をしようと思う度に読み返そうと思います。

消費大国のアメリカでも
モノを“持たない世代”が育ちつつある

 筆者の買い物をしたくなくなった気分とは裏腹に、今回のサイバーマンデーの売上は過去最高を記録すると予測されています。各種経済レポートを見ると、米経済の7割が個人消費によって占められているそうです。アメリカ人が日常的に断捨離を覚えると、不景気などの影響が出てしまいそうですね。その点、筆者の行動は非常に危険なものだったのかもしれません。

 とはいえ、アメリカでも持たない世代が育っています。筆者が仕事場にしているWeWorkも、以前に本連載で紹介したスマホ活用のカーシェアサービスGIGも、持たない、シェアすることを前提にして、しかし不動産や自動車を利用するライフスタイルを維持する、という仕組みです。

 断捨離で捨てられない人へのアドバイスとして、「写真を撮って捨てる」という方法があります。写真に撮るぐらいだったら、最初から実態がなくデータで受け取れば良いのにと思うと、音楽や書籍の類は最初からデータで受け取れるようになっていますね。

 筆者ももうCDプレイヤーがないので、音楽はデジタルでしか持っていません。しかも購読型サービスになったので、所有しているとも厳密に言えません。その点、ものが増え続ける事態には、そのうち歯止めがかかっていく可能性はあります。洋服までデータになったら面白いですね。

 しかし今度は、データや購読型サービスの断捨離が必要になりますよね。もうこのデータやアプリは使わないからスマホから削除しようとか、対して使っていないアプリの購読を打ち切ろうとか。前述のように、サイバーマンデー近辺を購読の開始日にしておけば、ものとともにサービスをそれぞれ断捨離でき、落ち込んでセールでも反応しなくなるのではないでしょうか。

 その点、こうした断捨離をかいくぐって残ったモノやサービスは、長く使われる、非常に強いつながりを持つものになっていくでしょう。カメラとか、お気に入りのヘッドフォンとか、Adobeのアプリ購読とか、この原稿を書いている漢字変換ソフトのATOK、テキストエディタのUlyssesの購読などがそれに当たります。

 そしてなによりスマートフォンとノートパソコン。やっぱりこの2つのデバイスは絶対必要です。これらが他のモノに置き換えられたり、統合する日も来るのかもしれませんし、実態がなくなるのかもしれません。断捨離に耐えうるテクノロジーの姿については、今後も注目していきたいと思います。


matsu

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura