大王製紙の巨額融資事件。調査報告書は、制度や仕組みは整っていたものの、オーナーの権利濫用を防ぐルールが整備されていなかったと指摘している。では、具体的に「誰がどのようにして猫に鈴をつけるのか」。その仕組みとルールを考えてみよう。

オーナー経営者さえ排除すれば
問題は解決するのか?

 大王製紙の元会長で創業者の孫である井川意高氏への巨額貸付問題は、2011年11月21日に、会社側が元会長を特別背任罪で刑事告発することにより、一応の幕引きを図ろうとしているように見える。

 外部の弁護士を含む、特別調査委員会の2011年10月27日付の報告書によれば、「(会社の)コンプライアンスに係る基本的な制度や仕組みは整備されており、その見直し・改善も適時になされていた。しかし、大株主であり役員でもある創業家による権利濫用を防止するという観点からは特段のルール整備がされていなかった」ということらしい。そして、特別調査委員会は、「創業家一族が持つ絶対的支配権を薄め、ガバナンス、コンプライアンスが機能するように改革することが重要である」と提言している。

 この提言を素直に解釈すると、「悪いのはオーナー経営者で、それ以外の経営陣は、みな適切に業務を行っていた」「オーナー経営者がいる限りは、ガバナンス、コンプライアンスは機能しない」、ということになりはしないだろうか。そうだとすれば、上場しているオーナー会社は、全て、上場廃止にするか、ないしは、オーナー経営者を排除するか、その持株を分散させなければならないことになる。今回は、あえて、オーナー経営者を排除せずに、うまく、管理する方法を検討してみることにしたい。