統合会社はどう経営される筈だったのか

 キリンホールディングスとサントリーの経営統合の破談が発表された。数日後、新生銀行とあおぞら銀行の経営統合断念という報道が続いた。共に、対等合併を目指していた点で、交渉には多難が予想される組み合わせだった。

 今や予想でなく空想にしかならないが、キリンとサントリーの経営統合が実現した場合、いったいどのような形の経営が行われることになったのだろうか。

 日本的な対等合併で一番ありそうなのは、会長と社長を両者で分け合い、統合経営委員会のような合議組織を作り、ビールはキリン側に、ウィスキーはサントリー側にといった形でそれぞれ主導権を取る分野を分けていくような形だが、こうした形では経営の意思決定が遅くなりそうだし、いつまでも旧会社を引きずって社内の勢力争いが続いたのではないだろうか。たとえば、経営企画や広報といった機能をどちらかの主導の下に置くのかを決定するのは大変だ。

 潰れた会社ではなかったので、失敗と断言するのは失礼かも知れないが、対等合併の最大の失敗例はかつての第一勧業銀行だろう。旧第一銀行(合併当時預金量6位)と旧勧業銀行(同8位)の勢力が拮抗し、主要ポストを「D」と「K」で「たすきがけ」する人事システムが採用され、銀行員が自分の人生を預金する場所とも言える人事部は20年以上二つ併存した。合併の結果、預金量日本一の時代が長くあったが、ついに一流と言える銀行にはならなかった。海外での失敗例はダイムラーとクライスラーだろうか。彼らも「対等」がブレーキになったように見える。

 この「たすきがけ」の伝統とノウハウは、衝撃的な「三行統合」を発表して生まれたみずほ銀行に変数を2から3に変えて複雑化して受け継がれているようだが、メガバンク3行の中で業績的にみずほ銀行の足踏みが見られることと無関係ではないように思う。三菱東京UFJ銀行は旧三菱銀行出身者、三井住友銀行は旧住友銀行出身者が経営の主導権を取ることが比較的はっきりと見えており、「対等」が単なる建前にとどまっていて、経営のブレーキとして作用する度合いがみずほ銀行よりも軽いのではないか。