モンゴル視察3日目と4日目、現地の自作PCや家電量販店、盗品闇市の取材から、現地のエンジニア志望の若者たちと交流したり、マンションを契約したり、店舗の工事をチェックしたり、予定が山積み。とはいえ、5日目は早朝フライトなので強行軍でウランバートルを縦横無尽に走り回った。

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モンゴルのザハ(市場)でスマホのばら売り新品パーツを発見

 朝、会社関係の書類の受け渡し。日本と同様、委任状さえあれば、相当な部分を外注できる。やっと、モンゴルに設立した会社の登記簿をゲットした。会社名は、日本の会社と同じ「ハイテンション」。SEO的に駄目なのは知っているが、夢と希望を込めてこのまま突き進むことに。

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モンゴルで設立した会社の登記簿

 その後、海外の日本語ガイドとマッチングできるサービスを利用して予約してあったガイドさんと待ち合わせ。モンゴル在住5年の田村裕香さん。もちろん、日本人なのでばりばり日本語で会話できる。田村さんは、普段日本からの旅行者を郊外に案内するツアーをしているそう。1泊から、何日もかけて内モンゴルへ旅行するプランにも対応するそうで、夏になったら是非頼んでみたい。

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3日目をガイドしてくれた田村裕香さん

 まずはお茶をしながら、モンゴル事情をヒアリング。やはり、住んでいるだけあって、情報の密度が違う。とはいえ、デジタルにはそこまで詳しくないようなので、あちこち案内してもらうことになった。

 まずは、SIMをゲットしに行く。先日、通訳さん名義でユニテルのSIMを入手してはいるのだが、やはり自分の名義の番号が欲しいからだ。また外国人はNGと言われても困るので、今度はモビコムのショップに行く。あっけなくデータプランをゲット。電話番号と3GBのデータ通信がセットになり、2万トゥグルグ=920円となる。筆者からすれば激安だが、現地の感覚だとほぼ日給分となる。

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通話&データ通信可能なSIMをゲット。直前に入手したSIMフリーiPhone 7sで利用することにする
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PINを入力する
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1000トゥグルグ分の通話と3GBまでの通信が可能なプリペイドタイプ

 続いて、モンゴル科学技術大学へ向かう。ここではJICAによる「高等専門学校留学プログラム」が行なわれている。5期にわたって、200人ずつの留学生を日本各地の高専で受け入れ、1000人のエンジニアを育成しようという活動だ。そして、ここの数学の授業を田村さんのご主人、田村幸雄さんが担当していたのだ。

 本来は、10代の彼らに簡単にインタビューしようかと考えていたのだが、日本のITライターが来ると言うことで、急遽2クラスの授業の代わりに話すことになった。何の準備もしてきていないので、質問を交えながら進めることに。

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モンゴル科学技術大学
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3階に高専留学プログラムの教室が用意されていた

 教室に入って挨拶すると、いきなり「きりーつ」と声が上がり、全員がいきなり立ち上がり、「礼、着席」と続いた。もちろん、日本語だ。あー、そんなのあったなぁと懐かしくなる。筆者はモンゴル語を一切話せないので、日本語で自己紹介からのインタビュー開始。1クラス15人くらいいるが、全員スマホを持っている。しかし、手を上げてもらったところ、iPhoneはクラスに1~2人だけ。なぜかと聞くと、当然iPhoneが欲しいが、金額的な理由でAndroidを使っているとのこと。AndroidではGalaxyが人気で、次点がLGの端末だった。通訳さんにiPhoneとAndroidの比率が半々と言われたというと、お金に余裕がある大人になればiPhoneの比率が上がるという。

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数学とC言語の授業だったが、急遽筆者がITに関する話をすることに

 スマホをいじるのは1日1~2時間程度とのこと。何をしているのかと尋ねるとFacebookと即答した。また、全世界の流れと同様、若い人たちの間ではInstagramも流行っているという。ちなみに、Twitterは誰もやっておらず、スマホゲームもそれほどしないみたいだ。ただし、PCゲームは相当メジャーらしい。

 その後、なんでも質問に答えますと言うと、我先に手を挙げて質問してくる。日本語は支障なく上手。日本語を本格的に勉強して、たった1年半だというから恐れ入る。

 学ぶべきプログラム言語は何か、AIが人類を滅ぼすのは本当か、といった質問が次々と。イーロン・マスク氏やスティーブン・ホーキング博士の意見を紹介しつつも、個人的な意見として別に今AIは危険とは考えていないこと、AIと言う言葉の印象と現実は乖離していることなどを説明した。

 注目されているカテゴリーは何か、と聞かれたので、取材したことのあるベンチャーキャピタルが注力していると言っていた、AI、ブロックチェーン、バイオ、VR、IoT、ヘルステックと受け売りで回答。すると、ビットコインについてどう思うか、AI技術者になるにはどうすればいいか、など質問攻め。流石に答えきれないことも出てきた。

 この日は、編入試験を受けたあと合格発表前というタイミングで、みんなそわそわしている。合格すれば、来年の4月には来日し、全国の高専の3年生として編入する。どこに来たいか聞いてみると、北海道がダントツ人気。理由は、気候が似てるからとのことで笑ってしまった。次点が広島だった。

 もちろん、みんな18~19歳なので現時点でハイレベルなスキルを持っているわけではないが、向上心が強く、まじめそう。実際、日本の高専に来て、日本人の中でもトップの成績をとる子もいるそうだ。個人的にもこの活動は支援していきたいと思う。

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すごくまじめでいい子たちだった。向上心がすごい
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先生は真ん中でと言われて撮影した別クラス。隠れてしまった

 大学を後にして、次はPCショップや家電量販巡りに連れて行ってもらった。自作PC市場は大きくないものの、中古パーツショップは存在する。スマホショップと同様、無造作にガラスケースの中に置かれているが一通りのパーツはありそう。ショップ内には自作したPCでWindows 7が動いていた。

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ジャンクパーツショップ。客は誰もおらずアウェイ感がすごいので短時間で退散した
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PCショップの上はネットカフェだったが、全員ゲームをやっていた

 続いて、家電量販店を片っ端から回る。秋葉原の裏路地にあるような店から、日本の家電量販店のような店まで多種多様。とはいえ、怪しい商品などはなく、綺麗でそこそこいい値段だった。たとえば、Core i5、4GBメモリー、500GB HDD、Windows 8、19型ディスプレー付きで、129万9900トゥグルグ=約6万円という感じだ。炊飯ジャーも安いのだと1000円程度だが、有名メーカーになるとその10倍くらいする。

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モンゴルの外れには、家電量販店が連なるストリートがある
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デスクトップPCはそこそこのお値段
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ブランドを選ばなければ激安品もある
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スマホはやっぱり高級品

 もっと怪しいところも見たくなり、モンゴルでもちょっと所得の低い人たちが集まるナラントール市場に連れて行ってもらった。重犯罪はほとんどないが、スリやひったくりは普通にあるそう。上等ではないか。

 到着したら普通のデパートみたいだった。密度高く商品が積み上げられ、日本の雑貨店のようだ。そんな中、変な店も発見。スマホを売っていたのだが、その奥にはパーツが山積み。どうにも正規品に見える、GalaxyやiPhoneの新品のバラパーツが売っているのだ。流石に日本では見ない光景なので、面白かった。

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ナラントール・ザハの建物内で見つけたスマホショップ

 最後に、盗品が売られているという闇市へ案内してもらう。とはいえ拍子抜けした。なぜなら、どちらかというと露天でフリマのようなオープンな雰囲気だったのだ。しかも、商品がショボすぎる。靴や衣料品、工具などのお古が並んでいる。リモコンやACアダプターを山積みにしていたりしている。1~2ヵ所、携帯やスマホを置いてあったがぼろすぎる。確かに、人の柄もちょっと悪いので、退散することにした。

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途中の露天では、生活雑貨などを安価に販売している
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盗品市も活気づいていたが、高そうなものは並んでいなかった

 この日は、一緒にモンゴルでビジネスをする仲間たちも日本から来て合流。The Bullという店で、火鍋を楽しんだ。羊はもちろん、馬や牛などのしゃぶしゃぶをこれでもかと注文し、酒も飲みまくって、なんと会計一人2000円も行かないのだ。素晴らしすぎる。昨年来たときよりも、野菜が豊富に出回っているように感じていたのだが、モンゴルの大統領が7月に変わり野菜の自国生産を促しているためだという。

 オーダーは「ゾクチョウ!」と言って、ウエイターやウェイトレスを呼んで、注文する。毎回毎回メニューを下げるので、メニューを持ってきてもらってから商品を選ぶのだが、それでいいらしい。モンゴル人も一緒に卓を囲んだのだが、小話をひとつ。反町隆史さんがチンギス・ハーンを演じた映画があるそうで、その中で、族長を呼ぶシーンがあるという。偉い族長を反町がゾクチョウと呼ぶシーンなのだが、モンゴル人にとってはウェイターを呼ぶ言葉なので鉄板の爆笑シーンとのこと。

 ちなみに、ヤナギヤという発音はセクシーという意味。通訳は若い女性だったのだが、名前を知ってからはホットセクシーと英語で呼ばれるようになった。

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The Bullで火鍋三昧。モンゴルに来た人にはイチオシ

 翌16日は、出店予定地の工事状況を視察した。160席くらいの店なのでなかなか大掛かりだ。工事の少し進行は遅れ気味だが、担当者と話したところ、すべて把握していたので安心した。

 天井が高いので、提灯を大量に吊して、日本の情緒を感じさせる店内にしようと考えている。店名は「花円」で、12月下旬オープンを目指して進行中だ。もし、モンゴルに遊びに来たときには、ぜひご贔屓にいいただければ嬉しい。

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ばりばり工事中。とはいえ、元から工期通りには終わらないと聞いていたので、想定内
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出店予定地。原価BAR4店舗を全部足したよりも広い
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設計図。真ん中にはお立ち台にも使えるステージを設置

 続いて社宅の物件探し。中心街のデパートの隣に位置し、見た目もゴージャスなマンションを内見。日本で言うところの六本木ヒルズのような物件で、家賃も7万円くらいとそこそこだが、まぁ綺麗だしいいかなと思って契約しようと思ったら、もう次から次へと聞いてない条件が出てくる。郷に入っては郷に従えってことで、相当我慢して受け入れていたのだが、先方限度ってものを知らない。オーナーの態度もすごい悪いし、1ヵ所壊れて風が入ってきているところを修理してくれと言うと、とても嫌そう。いや、マイナス40度になるところで、高い家賃を取るのにそれはないでしょう、ということで実は引っ越しの荷物を全部持ってきていたのだが、キャンセルすることにした。

 急ぎ、次の物件を見に行く。メイン通りから2分ほど歩いたところにあるマンション。ちょっと古いが1階にスーパーがありイイ感じ。警備員も常駐しており、ネットも完備。ちなみにネットは、ケーブルテレビと一緒になっていることが多い。ベッドやテレビなど、家具も全部付いているし、きちんと掃除されており、暖かい。850000トゥグルグ(約3万9000円)とのことで、契約することに。そのまま、家賃3ヶ月分と1ヶ月の保証金を振り込み、取って返して即引っ越し。Wi-Fiもつながり、速度は上下30Mbpsと上々だ。

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2軒目に内見した物件。狭いが綺麗で家具付き
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マンションからの夜景。寒い
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全部屋にケーブルテレビが通っている
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Wi-Fiルーターも付いている
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Wi-Fiも使い放題で速度も上々
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日本のテレビ番組も流れている

 そのままBARに繰り出し、しこたま飲み食いして、翌朝は6時出発で空港へ。

 モンゴルは確かに経済はそこまで調子はよくないし、物価や人件費も安い。しかし、特に後進国という感じは受けず、やっぱりバブル前夜の予感はひしひしとある。とにかく、人が温かい。最初は、無表情のぶっきらぼうなのだが、知り合いになると距離が近くなる。ちなみにパーソナルスペースという概念がほとんどないので、普通に顔をくっつけてくる。

 ITもこれからだが、PCとスマホの普及率は高く、準備は万端という感じ。最近、日本の光回線が遅いという話も出ているので、インターネット環境も五分五分だ。1000人エンジニア育成プログラムもそうだが、日本語や英語を話せるITエンジニアも増えているとのこと。

 今後、モンゴル在住エンジニアと組んでオフショア開発をするところも増えてきそうだ。筆者は、今後も定期的にモンゴルに行くことになるので、引き続きウォッチしていこうと思う。

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帰国の途中で、すでにまたモンゴルに戻りたくなってきた

筆者紹介─柳谷智宣

柳谷さん顔写真

1972年生まれ。ネットブックからワークステーションまで、日々ありとあらゆる新製品を扱っているITライター。パソコンやIT関連の媒体で、特集や連載、単行本を多数手がける。PC歴は四半世紀を超え、デビューはX1C(シャープ)から。メインPCは自作、スマホはiPhone+Xperia、ノートはSurface Pro3とMacbook Air。著書に「銀座のバーがウイスキーを70円で売れるワケ」(日経BP社)、「Twitter Perfect GuideBook」(ソーテック社)、「Dropbox WORKING」(翔泳社)、「仕事が3倍速くなるケータイ電話秒速スゴ技」(講談社)など。筋金入りのバーホッパーで夜ごとバーをハシゴしている。好きが高じて、「原価BAR」を共同経営。現在、五反田・赤坂見附・銀座で営業中。