今、企業が求めるのはコミュニケーション能力のある人材だ。医療の現場でも同じことが言える。成績が良いだけで医学部を受験しても、医者として患者の気持ちを理解する能力がなければ、良い臨床医にはなれない。AI時代になれば、その傾向はさらに顕著になる。

池谷敏郎 医学博士
いけたに・としろう 池谷医院院長、1962年東京都生まれ。東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。97年池谷医院理事長兼院長に就任。「世界一受けたい授業」「林修の今でしょ!講座」などテレビ番組等に多数出演、分かりやすい説明と真摯な人柄で人気を集める。著書に『体内の「炎症」を抑えると、病気にならない!』(三笠書房)など多数。

これからの医者に求められるのは、
聞く力と伝える力

 最近、中国でAIロボットが同国の医師国家資格試験に合格したというニュースがあった。合格ラインをはるかに上回る点数だったという。開発した中国AIメーカーによれば、このAIロボットは患者情報を自動的に収集・分析し、初期診断を行うことができるという。

 医学博士・池谷敏郎氏はこのニュースを聞いて、次のような感想を持つ。

 「そもそも従来の医学部は記憶の勝負で、優秀さが評価されるのは、主にその記憶に基づいた診断能力でした。症状や検査データなどをインプットして、それを病の可能性に結び付ける。ところが、記憶に関して人間はAIにかないません。さらにAIは海外の最新の論文でさえ瞬時に大量にインプットできる。そのAIが医師国家試験をクリアできるのは当たり前で、驚きよりも、ついにその時代が来たのかという感慨を覚えます」

医者が患者の気持ちを理解しなければ
QOLは低下する

 だからこそ、医者としての優秀さは、今後ますます人間性に左右されることになる、と池谷氏は予測する。

 「患者さんは信頼感が無ければ本音を語らないこともあります。そして、診断結果と治療方針を伝える際にも、医師からの一方通行の説明では同意が得られないばかりか、後のトラブルにつながる可能性も高まるのです」

 「病は気から」という言葉の通り、医者と患者とのコミュニケーションが欠落していては、一定の治療効果への患者満足度も低下してしまうというのだ。このことは結果として患者のQOL(生活の質)を下げ、そのストレスは寿命にまで影響してしまう。

 「ガイドライン通りに診断と治療ができても、人の心を理解できなければ、臨床医として決して良い医者とはいえない。AIが医療に貢献する未来においては、ますます医者の人間性が試されることになると思います」(池谷氏)

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