ハッタリをかませ!

 私が大きな会社を辞めて、しばらくお世話になったU社長は、まさにman of the confidence、まるで自信の塊のような人。あるとき、こんなエピソードがありました。

 その会社では、通訳の手配などもしていたのですが、ある日、韓国語の通訳を探してほしいという電話がかかってきました。応対した私は、希望日時と場所を聞き、「では、お調べしてからお返事します」と言って電話を切りました。その応対に、U社長は怒ったのです。「そんな会社に誰が頼むと思うか! まず『できます』って言うんだ。それから、何とか探すんだ」。

 それまで大企業のぬるま湯文化に浸かっていた私にとって、これは衝撃的な事件でした。そんな、できる確証もないのにできるなんて無責任なことは、絶対に言えなかった。しかし、裸一貫、自分の信用だけで数々の修羅場を潜り抜けてきたU社長は、おそらくこうやって一つずつ実績を積み、自信を身につけてきたのでしょう。

 もちろん、これは極端な例ですし、それが常に正しいとも思いませんが、この出来事から大切なことを一つ、私は学びました。それは、「自信のある人は、まずはできると決め、後からどうやるかを考える。一方、自信のない人は、できる方法が見つかってから、できると言う」ということ。自分はずっと、後者でした。

 これから先のことをできるかできないかは、正直誰にもわかりません。自信のある人でも、100%確実ということはないはずです。ただ、できる確率が30%くらいのときでも、なんとしても残り70%の不確実さをクリアしてみせるという気概が自信をつくるのです。自信が持てない人は、事前にその70%を確実にできる方法を探すのですが、そんな確実なものなどないのが普通です。

 だからやっぱり、できる確率が30%あるいは40%のときに、根拠はないが、自分が真剣に取り組めば必ずできると信じ切れるかどうか、つまり「できる!」とハッタリをかませるかどうか。ここが、自信のあるなしの分かれ道ではないでしょうか。