米国シティグループなど複数の大手金融機関が共同で、サブプライムローン関連の資産を買い取るために750億~1000億ドル規模の支援ファンドを設立する検討をしているとの報道があった。

 このファンドの意図は、サブプライム関連の処分売りによって保有資産の価値がさらに下がり、損失が拡大するというスパイラル的な負の拡大を避けようとしたものであろう。ただこれは考えてみると、自分の資産の値下がりを防ぐために自分で買い支えをする形だ。それを直接やるのは格好悪いので、皆で金を出し合い、ファンドで行なえば、何とか格好はつくのではないかという話にみえる。日本のバブル崩壊の頃に、株価が下落すると困るので皆で買い支えようとした話と似ていて、日米、考えることはそう変わらないようだ。

 一方で、このニュースを聞いて考えついたのは、このファンドで確実に得をするのは誰なのか、ということだ。サブプライム資産の下落が止まれば、端的にいって、銀行の現経営陣が得をする。しかし銀行自体の最終的な損得で考えれば、サブプライムにまた金を投入するわけだから、リスクをさらに拡大させる可能性もある。

野村の巨額損失の裏で儲けた人間も

 今の損失の拡大を防ぐためには、これが最良の手段なのです、と株主を納得させることができれば、結果として得をするのは今の経営者だ。なぜなら経営者は、一時的に損失を止めておけば、当分の間少なからぬ報酬がもらえる。

 これに関連して、野村ホールディングスがサブプライム問題の影響により、1~9月で総額1456億円の損失を蒙ったという報道が新聞に出ていた。野村も、アメリカ進出では何度も損をしており、野村にとって米国ビジネスは鬼門かなとも思うのだが、その要因については他の場で論じるにして、別の視点から考えてみる。