Androidの父とも呼ばれるAndy Rubin氏が、「個人的な理由」から、自身が率いるEssential Productsを1ヵ月休職するという。端末ローンチも無事にこぎつけ、ハイエンドスマートフォンとしてこれから拡大を図るというところでのこの休職だ。「個人的な理由」とは何か? Essentialにどのような影響があるのだろうか。

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Google時代、2012年のMWCでのAndy Rubin氏

Androidの絶頂期にグーグルを離れたRubin氏

 Rubin氏がGoogleを退職したのは2014年秋のことだ。辞めるタイミングや退職時のGoogleの対応から(大きなリリースなどはなし)、社内で何かもめたのかなと勝手に推測していた。

 詳しい人はすでにご存じだろうが、Rubin氏は2005年にGoogleに入社(自身も創業者の1人だったDange社でSidekickというモバイル端末を開発後、Android社を創業。そのAndroidをGoogleが買収した)。Androidの開発をリードしていた。

 Androidは短期間にiOSに対抗するOSとなり、今やそのシェアは8割を誇るまでになっている。この功績を考えると、Rubin氏がなぜ絶頂期の2013年にAndroidから社内の別のプロジェクトに移ったのか、当時は首を傾げてしまった。

 その際にLarry Page氏(当時のGoogle CEO、現在AlphabetのCEO)はブログで「AndyはGoogleで新しい章を始めることにした。Andy、ムーンショットを頼むよ!」と述べたが、正直説得力に欠けた。Androidを引き継いだSundar Pichai氏はGoogleがAlphabetを作る際にGoogleのCEOとなったので、Page氏と共同創業者のSergey Brin氏のよほどのお気に入りなのだろう。

 ちなみにモバイル業界の最大のイベントである、Mobile World CongressでRubin氏がメインのステージに立ったことはなかった。Androidが優勢になり始めた頃はGoogleのEric Schmidt氏が、そして2015年にはPichai氏がステージに立っている。

ロボット事業では1年未満でGoogleを去る

 Rubin氏はその後、Googleでロボット事業に携わることになるが、それから1年もしないうちにGoogleを去った。Rubin氏は以前からロボット好きで、自身に”Android”というニックネームが付けられ、それを製品名にしたというエピソードもある。GoogleでRubin氏は、日本のSCHAFTを始め、Boston Dynamicsなど、1ヵ月に7社のロボット企業を買収するなど、テコ入れを図っていることが伺えた。

 しかし、Rubin氏が辞めたあと、Googleのロボット事業は失速が明らかに。前述のSCHAFT、Boston Dynamicsともに今はソフトバンクグループのもとにある。

 そして、Essential Productsがざわざわと話題になりだしたのはそれからのことだ。

 「選択肢が少なくなり、不要な機能が増えて、生活を混乱させる。お互いが連携しない製品がどんどん増えていく」とRubin氏は現在の問題を描写したあと、「この責任の一部が自分にあると気がついた」と、Essentialをスタートした理由を説明している。なお、Essentaialは”不可欠”を意味する。

 Essentialの最初の端末(「Essential PH-1」)は9月初めに米国で発売された。7月の段階で、米国ローンチの後に欧州でもリリースする予定としており、Essential Productsの公式サイトは英語のほか、ドイツ語、フランス語、中国語、日本語に対応しており、日本で発売を計画していた節もある。

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発売されてすぐに200ドル値下げされた「Essential Phone」

ハリウッドからハイテクまで
“不適切な関係”がいろいろなところに

 さて、記事冒頭に戻り、「個人的な理由」とは何なのだろうか? 最初に報じたThe Informationによると、Google時代に“不適切な関係”があったという。

 Googleでは、上司と部下の恋愛関係を禁止しており、そのような関係になった場合は会社に報告しなければならないとのこと。Rubin氏の件は、部下の女性が苦情を出したことで明らかになったようだ(2人がGoogleにいた頃だ)。そして“不適切な関係”があったことが認められる、という最初の調査結果が出た直後にRubin氏はGoogleを辞めたのだという。

 「2014年、Googleの人事部門はRubinの告発者に、調査結果の中でRubin氏を懲戒処分にすることを推奨していると告げた」とThe Informationは記している。すべて内部の情報筋からの話のようだ。

 なお、EssentialはThe Informationに対し、「Rubin氏がGoogle時代に持った関係は合意の上のものだ」と語っている。

 折しも、2017年は米国でセクハラ問題が大きく取り上げられた年となった。春にはベンチャーキャピタルと女性起業家との間のセクハラが数件明らかになり、その後はハリウッドの名プロデューザーを始め、エンターテインメント界で次々と明らかになった。同様の話はハイテク業界でも、Uberや人事系スタートアップのBetterWorksなどがある。

 真相は当人たちしか知り得ない部分もあるわけだが、Rubin氏の休職がEssentialに与える影響はどうなのだろうか。

 Essentialの出足は必ずしも良好とは言えない。Sprintによると開始から1ヵ月弱での販売台数はわずか5000台とのこと。ヒットとは呼べない。端末の価格が(200ドル近く値下げしても)500ドル近くすることを考えると、消費者はRubin氏の存在を知っていて、関与しているとわかっていない限り、手を伸ばさないのではと言える。

 なお、Rubin氏不在の間、社長兼COO(最高執行責任者)のNiccolo de Masi氏が業務を取り仕切るという。


筆者紹介──末岡洋子

末岡洋子

フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている