前回は、年齢を重ねると運用能力が低下していくため、複雑な商品への投資を避けること、運用能力が低下する前に将来の運用計画を立てること、そして信頼できるアドバイザーを活用するなどの対策が必要になるとお話ししました。今回は、その大変な老後がますます伸びているという話をしたいと思います。

止まらない長寿化

 平成29年7月に厚生労働省から簡易生命表(平成28年)が公表され、最新の平均寿命が発表されました。日本人の平均寿命は続伸し、男性が80.98歳(+0.23歳)、女性が87.14歳(+0.15歳)で、引き続き主要な先進国の中でトップクラスの実績となりました。特に女性の平均寿命は2位のフランスの85歳を約2歳も上回り、主要な先進国を圧倒している状態が続いています。

 でも、将来計画を立案するうえで大事なのは平均寿命ではなく、平均余命なのです。例えば55歳のオヤジたちの平均余命は28.02年、つまり今55歳のオヤジたちは83.02歳まで平均的に生きることを意味します。同様に60歳の場合は83.67歳、65歳の場合は84.55歳となります。長く生きるほど平均余命は少しずつ長くなる傾向があります。少なくとも平均的には65歳の定年退職後の人生が20年続くことを想定しなくてはなりません。ただ、これはあくまで“平均”の議論です。ざっくり申し上げれば平均は半分の人たちがその年齢の前に亡くなりますが、半分の人たちはその年齢以上に長生きすることを意味します。“平均”の議論からあえて外れると、4人に1人の65歳のオヤジたちは90歳まで生きるのです。現時点では100歳以上まで生きる確率は5%弱ですが、保守的に考えるのであれば人生100年を前提にすることも異常なこととは言えない時代となっているのです。実際、先般紹介した『ライフ・シフト』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著)という書籍では、2007年生まれの日本人の平均寿命は107歳となっており、100歳以上の世界はもはやSF映画やアニメの世界ではなく、一部の人に起こり得る不可避な現実といっても過言ではないでしょう。