クルマ最後の従来素材、ガラス軽量化にしのぎを削るメーカーたちこれまで実用化されたPGのうち最大面積記録はトヨタのプリウスαのパノラマルーフだ Photo:TOYOTA

世界で進められている
クルマのガラスの軽量化

 クルマに残された最後の従来素材──それがガラスである。重量は使われている個所と厚み、ガラスのグレードにもよるが、フロントウィンドウの場合、1枚で10kg以上。高級セダンのフロントウィンドウは15kg以上のケースもある。クルマ1台分の窓ガラス重量は、2リットルクラスのミニバンだと35kg程度になる。

 この重量を半分にしようという試みが世界中で進められている。ガラスではなく、ポリカーボネート樹脂を窓に使うための研究開発である。専門用語ではプラスチック・グレージング(PG)という。開発が加速したきっかけは、2014年秋の自動車の国際基準を認証する会議だった。ECE(国連欧州経済委員会)内のWP29(ワーキングパーティ29=自動車基準調和世界フォーラム)で、従来は認められていなかったフロントウィンドウのPG化が認可された。

 ポリカーボネートを使うPGは、面積当たりの重量がガラス比で40~50%軽い。PGは成型の自由度が高く、ガラスでは絶対に不可能な形状が作れる。そして熱電導率はガラスの約5分の1と断熱性が高いから、冷房・暖房の使用エネルギーが抑えられる。半面、ガラスほどの剛性がなく表面に傷がつきやすい。フロントとリアの窓の場合、ワイパーで繰り返しこすると傷がつく。サイドウィンドウは、繰り返し開閉すると傷がつく。そのため、PGの使用は、パノラマルーフ、リアクオーターウィンドウなど、固定された場所に限られていた。