アジア最大のローコストキャリア(LCC)のエアアジアグループ(マレーシア)で、長距離国際線専門のエアアジアXが、11月30日、関西国際空港に就航した。日本への就航は1年前の羽田に続くものだ。エアアジアといえば、ユニットコスト(1座席を1キロメートル運ぶコスト)3円と、ANAの4分の1のコストで航空機を飛ばしている。来日したエアアジアXのアズラン・オスマンラニCEO(最高経営責任者)に、日本市場開拓の狙いと低価格の秘訣を聞いた。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)

食事を有料化するだけで1万円安くなる<br />LCC 驚異のビジネスモデルアズラン・オスマンラニ(Azran Osman Rani)/米スタンフォード大学にて経営科学修士号および電気工学学士号を取得。デジタル衛星テレビのアストロ・オール・アジア・ネットワークスで事業開発部のシニア・ディレクター。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてアソシエイト・パートナーを経て、2007年7月、エアアジアXのCEOに就任。

――エアアジアにとって日本市場の位置づけは。

 日本は言語や文化が独特で、参入するにはそうとうのリサーチが必要だった。地理的にも東南アジア市場の外側にあり、独立した商圏を形成している。エアアジアが規模を拡大させるには重要な市場だ。

 エアアジアは、スターアライアンスやスカイチームといったアライアンス(航空連合)には加盟せず、世界市場にエアアジア1ブランドでの浸透を目指している。アライアンスと航空会社のブランドは別物で利用者に分かりにくい。将来的には1つの強力なブランドが重要になるだと考えているからだ。この考え方で、日本にもANAと組んでエアアジア・ジャパンを設立したし、同じようにタイなどほかのアジア各国にエアアジアブランドの会社を設立している。

――昨年12月に就航した羽田~クアラルンプールの実績はどうか。

 最初の3か月は平均で80%という搭乗率だった。ところが、3月に東日本大震災が起き、その後4か月間は搭乗率50%という難しい時期を迎えた。だが、当社はフライトキャンセルはしなかった。搭乗率50%とはいえ需要があったし、日本への積極的なコミットメントを示したかったからだ。7月以降は、搭乗率80%近くまで回復している。

――日本にLCCは浸透するか。

 現在、マレーシアでは航空旅客市場全体の55%をLCCが占めている。これが日本では10%に満たない。それでも日本にも浸透すると考えている。価格は重要な要素だ。

 すでにエアアジアを利用した日本人客の感想は、ハッピーだというものだった。どの分野でもそうだが、人は未知の体験には懐疑的になるものだ。LCCをよく理解していなかったり、なぜ価格がこんなに安いのか不明瞭なのだろう。エアアジアは新しい皮張のシートだし、乗ってみれば快適なはずだ。