「親のひと言」で消えたやる気は、なかなか戻らない

モティベーションに関して、もう一つ気をつけていただきたいのが、何気ないひと言で、子どものやる気を削いでしまうことです。

塾にやってくる子たちの能力には、当然のことながら差があります。しかし、その開きはみなさんが思うほど大きなものではありません。にもかかわらず、なぜグングンと伸びる子と途中で脱落してしまう子がいるのか?
これは、本人の自信によって説明できる部分が大きいと思います。

自信がある子は、自分の英語力が伸びていくことに疑問を持っていません。彼らは「塾でこれだけ習っているのだから、僕が英語を話せるようになるのは当たり前だ!」とでも言いたげな顔をしています。
一方、そうでない子の場合、保護者の言葉や態度に特徴があります。端的に言えば、子どもを褒めないのです。場合によっては、子どもの目の前で「この子、私に似て英語が苦手で……」とか「うちの子は、すぐサボる性格だからダメなんです」などと僕におっしゃる方もいます。
お母さんやお父さんの言葉にはものすごい力があります。こうしたひと言がどれほど子どもを傷つけているかを考えると、とても辛い気持ちになります。

「(そうか、僕はお母さんに似ているから、英語ができないのか……)」
「(たしかに私って、すぐにサボるダメな子だな……英語はあきらめよう)」

一度こんなふうに子どもが思ってしまうと、それを取り戻すのには並大抵ではない労力と時間がかかります。

英語は適切な方法で学ぶ努力を続ければ、どんな子でも身につきます。間違った知識に基づいた間違ったひと言で、子どもの将来をつぶすことは絶対にやめましょう。お子さんをどんどん褒めて、英語を使うことの楽しさを実感させてあげてください。

(本原稿は斉藤淳・著『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から抜粋して掲載しています)

【著者紹介】斉藤 淳(さいとう・じゅん)
J PREP斉藤塾代表/元イェール大学助教授/元衆議院議員。
1969年、山形県生まれ。イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。研究者としての専門分野は比較政治経済学。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。
2012年に帰国し、中高生向け英語塾を起業。「第二言語習得理論(SLA)」の知見を最大限に活かした効率的カリキュラムが口コミで広がり、わずか数年で生徒数はのべ3,000人を突破。海外名門大合格者も多数出ているほか、幼稚園や学童保育も運営し、入塾希望者が後を絶たない。
主な著書に、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)のほか、10万部超のベストセラーとなった『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)、『10歳から身につく問い、考え、表現する力』(NHK出版新書)、また、研究者としては、第54回日経・経済図書文化賞ほかを受賞した『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)がある。