面接は練習でうまくなるのに、
どうして第1志望の本番を
練習台にしてしまうのか。

  面接は練習することによって確実にうまくなる。
  だが、面接はテキストだけで習得できるものではない。実践の中で試行錯誤を繰り返すことでうまくなる。『メンタツ』が君にできることは、君の試行錯誤の時間を短縮してあげるということなのだ。
  短縮することはできるけど、ゼロにすることはできないのだ。
  君が20社回ってつかんでいく面接のコツを、半分の10社回るだけでつかめるようにしてあげられるのだ。
  アドバイスとは、後輩をある型にはめることではなくて、後輩の試行錯誤の時間を短縮してあげることだ。

  僕自身が就職のときに試行錯誤を繰り返した経験、就職後のOB訪問を受けた経験、そして面達塾での模擬面接セミナーで面接のレッスンをしたデータベースをもとに、『メンタツ』は作られている。
  もし君がきわめて優秀で熱心な人であっても、これと同じレベルに達するまでには、就職浪人を、何年もしなければならないだろう。だから、『メンタツ』は、面接を受けながら読んでいってこそ、本当の意味が出てくる。

  実際にいろいろ会社を回って、自分で失敗してみないと、『メンタツ』のありがたみがわかりっこないのだ。
  自分の足で会社を回って、夜、家に帰ってきて、今日のあの質問にはあんなふうに自分は答えたけども、こういう答えのほうがよかったんじゃないかな、と反省する。
  そのとき、『メンタツ』がかたわらにあると、君のアドバイザーになれる。

  「実践が一番いい練習台になるというのはよくわかりました」
  と言いながら、いきなり第1志望の会社を練習台にしてしまう人があまりにも多い。
  なんてもったいないことをするのだろう。

  会社の採用試験は、だいたい、1つの業界の中で、小さいところから始まって、一番人気のある大きなところをピークに、まただんだん小さい会社になっていくという流れになっている。
  君たちの多くは、いきなり第1志望の大きな会社からスタートしてしまうので、面接の実践でいろんな失敗をしながらコツをつかむころには、会社の規模はかなり小さくなっている。

  僕自身の経験で言えば、たまたま第1志望の会社が、ゆっくりと2回戦、3回戦と進んでいったので、その間に、猛烈なスピードでそれ以外の会社で失敗を積み重ねることができて、結局、第1志望の会社に滑り込みで間に合った。
  落ちては履歴書を書き、落ちては履歴書を書きしているうちに、スポーツ新聞の求人欄の小さな求人広告を見なければならなくなっていた。
  当時は、もちろんエントリーシートなどなかった。
  しかも、その広告欄の幅もだんだん小さくなっていった。
  コピーライター募集と書いてあるのに「免許証要」なんて書いてある。
  コピーライターの仕事に、どうして運転免許証がいるのだろう、というような贅沢を、もう言ってられなかった。
  こんなところにまで履歴書を送らなければならなくなっている自分に愕然とした。

  練習とは何か。
  それは失敗の経験を積み重ねることだ。
  かといって、練習のつもりでいくら会社を回っても、練習にはならない。
  本番は、練習のつもりでリラックスしてやったほうがよいが、練習こそ本番のつもりで真剣にやらなければ意味がない。
  君が受ける最初の30社はたぶん、1つも受からないだろう。たとえ『メンタツ』を事前に読んでいてもだ。
  たぶん、君たちが最初に回る30社は、人気ランキングの上から順番に30社を回ってしまうだろうから、やっぱり、全滅するのだ。

  そして、コツコツ真面目に練習すれば、31社目に、1つ目の内定通知が来るだろう。
  それからは、それでもまだ、通ったり、落ちたりの繰り返しになって、50社を超えると、君が受けるところ受けるところ、面白いぐらいに内定通知が届くようになる。
  通るか、落ちるかは、君自身の練習量(落ちた経験から得た学習量)であって、決して、会社の規模でも、競争率でも、難易度でもないのだ。
  小~大~小という流れの中で、ピークを迎える前に、いっぱい失敗をして、いっぱい落ちておけばいいのだ。
  それでもやっぱり君は、第1志望から順番に受けるのだろうか。

第1志望に臨む前に、
第1志望でない会社で
たくさん落ちておこう。

*連載の第2回(12/15)は、「自己紹介で通る人 自己紹介で落ちる人」をお届けします。