あくまでも「モデル」であることに注意

2つの脳のスペックがかなり近いのがバイリンガル、母語の脳のほうが大きいのが第二言語として習得した人――両者の違いはそんなふうにとらえられます。

ただし厳密には、実際の外国語の習得過程では、母語からの影響が皆無というわけではなく、両者の使い分けは徐々に進んでいきます。また心理言語学の分野では、バイリンガルはいつもどちらの言語を使うかを選択している(Bialystok,2009)とか、彼らの言語プロセスには両言語の想起が関係するという指摘(Kormos,2006)もあります。

そのため、「頭のなかに共存する2つの脳を自在にスイッチする」というのは、あくまでも言語習得を適切にイメージするためのモデルにすぎないという点はご注意ください。

ただ、同じエクササイズをするにしても、このようなイメージがあるかないかによって、学習に感じる負担は大きく変わってくると思います。

(本原稿は斉藤淳・著『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から抜粋して掲載しています)

※注
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【著者紹介】斉藤 淳(さいとう・じゅん)
J PREP斉藤塾代表/元イェール大学助教授/元衆議院議員。
1969年、山形県生まれ。イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。研究者としての専門分野は比較政治経済学。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。
2012年に帰国し、中高生向け英語塾を起業。「第二言語習得理論(SLA)」の知見を最大限に活かした効率的カリキュラムが口コミで広がり、わずか数年で生徒数はのべ3,000人を突破。海外名門大合格者も多数出ているほか、幼稚園や学童保育も運営し、入塾希望者が後を絶たない。
主な著書に、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)のほか、10万部超のベストセラーとなった『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)、『10歳から身につく問い、考え、表現する力』(NHK出版新書)、また、研究者としては、第54回日経・経済図書文化賞ほかを受賞した『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)がある。