[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米共和党の税制改革法案により、企業が海外に持つ利益の本国還流(レパトリエーション)が促され、ドルの長期的な下落に歯止めが掛かると予想している投資家は、期待を裏切られるかもしれない。

企業は現在、35%の米法人所得税を回避しようと、海外子会社に利益を滞留させたままにしている例が多い。こうした利益は約2兆6000億ドルに上る。現在通過している下院法案は本国還流分への税率を14%に、上院案は14.49%に、それぞれ引き下げる内容だ。

しかし、減税が法制化されたとしても、企業が急いで利益を本国還流させるインセンティブは乏しい上、大企業の多くは既に海外利益をドル建て証券に投資しているため、減税が長期的に見てドル高に作用するとは限らない。

ジョージ・W・ブッシュ政権は2004年、1年間の時限措置として税率を5.25%まで大胆に引き下げ、ウニクレディトの試算では約3000億ドルが米国に還流。米連邦準備理事会(FRB)による積極的な利上げも重なり、ドルは翌年13%近くも上昇した。

しかし、今回の減税は恒久措置であるため、企業は急いでレパトリを実施する必要がない。

TDセキュリティーズによると、期間は定かでないが、最大2500億ドルが還流する可能性がある。アナリストによると、これによってドルは多少押し上げられるかもしれないが、4兆5000億ドルに及ぶ世界の外為市場では大きな要因となりそうにない。

主要6通貨に対するドル指数<.DXY>は年初から8.1%程度下落している。

米大統領選でトランプ氏が勝利した昨年11月には、減税への期待などからドルが上昇していた。上下両院で減税法案が通過した今、「ドル強気派のお囃子が再開した」(ウニクレディトのアナリストチーム)。

しかしスコシアバンクの首席FXストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「大量の本国還流が起こったとしても、直接的なドル高要因にならないかもしれない。一部の大企業は多額の現金をドル建て資産で保有しているからだ」と言う。

多くの場合、海外利益は米銀の口座にドルで預金されているが、企業のバランスシート上は海外資産として扱われている。

ブルッキングス研究所の推計では、海外の現金残高で見た米企業上位15社は、海外利益の95%をドル建ての現金あるいは現金相当資産で保有している。

例えばマイクロソフト<MSFT.O>の6月末時点の年次報告書には、海外子会社の現金および短期資産の約92%が既にドル資産に投資されていることが明記されている。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのグローバル金利・通貨調査責任者、デービッド・ウー氏は「税制改革法案が通過した直後には、資金が急速に本国に向かう」と予想。しかし、減税による米財政赤字への懸念などから、ドルの上昇は来年第2・四半期までには息切れするとの見方を示した。

ウェルズ・ファーゴ・アセット・マネジメントのマルチ資産ストラテジスト、ブライアン・ジェーコブセン氏も、減税は既に織り込み済みで、長期的に見ればドルは下落を続けると予想した。

(Gertrude Chavez-Dreyfuss記者 David Randall記者)