僕らの仕事は基本的には「好き」でやっている仕事なので、数字を意識しないでいると、気づいたらあまりにも商売から離れてしまう。おもしろいことを続けるために、ちゃんと稼がなきゃいけない。

 この二つを同列に意識するのは僕らの文化、カルチャーであって、お互いのリスペクトの軸も同じ構造になっている。売上のいい人は、純粋に「すっげえ」と尊敬される。いまいち売上がよくないけど、時々すごい物件を果敢に探してくるメンバーや、おもしろい紹介文を書く人も、同様に尊敬される。その尊敬の度合いはほぼ同じである。

 リスペクトの軸をたくさん持つ組織を目指している。あいつはあれがすごい、と各人が勝負どころを持つ組織。「日本橋は任せてくれ」「高円寺は任せてくれ」というエリアでエッジを立てる場合もあれば、「売買は任せてくれ」「倉庫系は任せてくれ」と、建物のタイプで専門性を発揮する場合や「とにかくたくさん決める」「おもしろい情報を取ってくる」という強さであったり。それが発見できた人は、何か自信を持って仕事をしているように見える。

 僕らはチームと個人の両方を意識しているから、目標もチームと個人、それぞれにある。個人はそれぞれ仕事に対するスタンスや、新しい別のことをしたいといった都合があったりもするから、目標はまず自分で決める。そして、周りが納得するまで話す。売上も決めるし、「今年は新しいエリアを開拓する」といったミッションも課したりする。

 大抵の会社には毎年の目標があって、その多くは売上とか利益とか商品が売れた件数とか、数字の目標であることが多い。僕らが不思議に感じるのは、理念は「社会に貢献する」という感じでありながら、目標がいきなり売上・利益というやつだ。決して嘘ではないのだろうけれど、違和感を感じないといえば嘘になる。

 悩ましいのは、「それ、おもしろいからやりたいけど、大変な割にお金にはならないよねぇ」というときだ。お金だけで判断ができない僕らにとって、これは悩ましい。しかし、それは目標設定が不明確だから起こる悩みではない。本質的に「正しい悩み」であり、一瞬では答えが出ない方がいいという場面なのだ。ここでの判断が未来を分けるから、そういうときはじっくりじっくり議論することになる。

 そして、大きな可能性を直感的に感じたときは、考えすぎずにまず走り出すこともある。動いてから考える方が早いことも多い。仮に直接お金に結びつかなかったとしても点と点が結びついていくものだ。これも僕らの確固たる信念の一つだ。