マンションのムダな共用施設はこれだ!
ジム・プール・温泉・噴水・キッズルーム……

2018年1月21日公開(2021年2月25日更新)
ダイヤモンド不動産研究所
監修者 碓井民朗:碓井建築オフィス代表 一級建築士、建築家

マンションには、一戸建てにはないさまざまな「共用施設」がある。大規模マンションやタワーマンションになると、ゲストルームやキッズルーム、アスレチックルーム、さらにはプールやジャクジーまで備わっているケースもある。しかし、そうした共用施設は本当に必要なものというより、広告宣伝のためだったりする。そのうち使われなくなったり、無駄なコストがかかったりする心配はないか、あらかじめ確認しよう。

やがて使われなくなる「AVルーム」や「キッズルーム」

 「最近の新築マンションの広告を見て感じるのは、相変わらず平凡な『羊羹の輪切り』の住戸配置と『田の字型』の間取りのまま、派手な共用施設で差別化を図ろうとしていることです。私はこうした共用施設を『客寄せパンダ』と呼んでいます。見た目は興味を引きますが、実際に住んでみると使う気がしなかったり、コストがかかり過ぎたり、中には事故の原因になったりするものもあります

 こう語るのは、長年分譲マンションの設計に携わり、現在はデベロッパー向けの設計監修、購入者向けの購入相談などを手掛けている一級建築士の碓井民朗氏だ。

 碓井氏によると、一番使われなくなるのはAVルームだという。プロジェクター、ブルーレイ・DVDプレーヤー、オーディオ機器、スピーカーなど機材だけで数百万円かかり、さらに工事費を入れれば軽く1000万円を超える。

 しかし、引き渡し後の1年点検でマンションを訪れ、管理員に利用状況を聞くと、「誰も一度も使っていない」という答えが少なくなかったそうだ。映画を観るにしろ音楽を聴くにしろ、自宅でくつろいで楽しむからこそいい。わざわざAVルームへ行くのは面倒なのだ。

 キッズルームも同じようなものだという。最初はそこそこ使われるが、3~4年もするとほとんど誰も遊ばなくなる。

 一番の理由は、子供たちが大きくなっていくからだ。他にも、周囲の住戸から子供の声がうるさいというクレームが出たり、子供たちだけで遊ばせておいてケガや事故があったらどうするのかという声が上がったり、監督する人を置くのも面倒だ、となって閉鎖してしまうこともある。

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「噴水」や「滝」、「温泉施設」も問題が山積み

 エントランスまわりの噴水や滝は、見かけは豪華だが水垢などがたまりやすく、定期的な清掃が必要だ。水道代やポンプの電気代もかかる。風が強いと近くの1階の住戸に水しぶきが飛んで洗濯物が濡れ、クレームの原因になる。

 もっと怖いのは事故だ。幼児が水路でうつぶせに倒れると、3㎝ほどの深さでも溺死してしまう。そんなこんなで、やがて運用を止めるマンションが少なくない。

 大規模な新築マンションで一時、流行った温泉施設は最近はまったく見かけなくなった。お湯を沸かすボイラーや循環ポンプなどのメンテナンス、清掃や冷暖房におそろしくコストがかかり、それでいて利用者は少ないからだ。

 「イニシャルコストもランニングコストも大変高価なのです。ある住宅評論家が、『あれはゴルフ好きの男性の発想だ』と言っていました。ゴルフが終わってから仲間で入浴するのは楽しいかもしれませんが、同じマンションに住む住人どうしが一緒に入って何が楽しいのでしょう。特に女性は、ご近所の人に自分の裸など見せたくないはず。入居者のニーズを調べてつくったというより、広告宣伝の目玉にするためにつくった、まさに『客寄せパンダ』の典型です」(碓井氏)

最低限必要なのは、「集会室」と「応接コーナー」くらい

 大規模マンションで見かけるショップコンシェルジュ・サービスは通常、施設の維持管理費だけでなく、サービスを行うスタッフの人件費も管理組合が負担する。周囲に何もないような立地なら別だが、品揃えやサービスのメニューも中途半端であることが多く、わざわざ人件費を負担してまで営業すべきなものか、よく問題になる。

 フィットネスルームプールジャグジーなども、維持管理費などのコストと居住者にとってのメリットが見合わないとなりがちだ。

 そう考えると、分譲マンションの共用施設で最低限、必要なのは、管理組合の役員が打ち合わせしたりする集会室、自宅にまで招き入れたくない人と打ち合わせるためのロビーの応接コーナー、災害用の備蓄倉庫くらいかもしれない。

 それ以外は広告で大きくアピールされていても、あまり気にしない方がいいということ。それにつられてマンションを選ぶことのないようにすることが大切だ。

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