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イノベーションを巻き起こすには
企業のIT部門にも“二刀流”が必要か?

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第75回】 2017年12月15日
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デジタルビジネス推進組織の役割

 「クラウドサービスの導入・利用拡大」と「サイバー・セキュリティ被害への対応」を除いた5つのテーマについては、新規で立ち上げた専任組織が中心的な役割を担うべきと考える企業が1割を超えるという結果であったが、こうしたデジタル技術を活用したイノベーションを推進する組織に求められる役割と活動とはどのようなものであろうか。

 先述の形態のいずれの場合においても、調査研究活動、提案・推進活動、社内環境整備活動の3つの活動が必要と考えられる(図2)。もちろん、全ての活動を短期間で立ち上げることは困難であるため、初期段階にはこれらのどの活動を中心に据えるかを検討することを推奨する。

出典:ITR

調査研究活動:
イノベーションを担う組織は、調査研究(R&D)の役割を担うことが期待される。先進事例、技術動向、市場動向、主流・業界標準に関する趨勢などITやデジタル技術に関する調査研究だけでなく、自社が所属している業界の動向、社会・産業全般の動向、市場や顧客の動向などの幅広い分野に対してアンテナを張り巡らせることが求められる。事業部門が主体となってイノベーションを推進する場合は、こうした調査研究の結果を基にベンダーや技術の選定において専門家としてのアドバイスを提供することも重要な任務となる。

提案・推進活動:
具体的なイノベーション推進の中心となる活動であり、この組織が能動的に社内に働きかけるものである。調査研究活動で得た知見を基に、経営者や事業部門に対して気づきを与えるような啓発的な情報発信を行ったり、ビジネスにおけるデジタル技術の適用可能性を模索したりする。AIやIoTなどの先進技術の活用機会を発見して、ビジネス現場に提案することも考えられる。また、ハッカソン/アイデアソンの開催、ベンチャー企業との協業、ITベンダーとのPoC(コンセプト検証)の実施など、外部との連携を促進することも有効な活動といえる。

社内環境整備活動:
多くの企業では、イノベーションの創出・推進に対する環境が十分に整っていない。イノベーションを具現化していくためには、社内のリソース(人、モノ、金)を確保し、機動的に動かしていかなければならないが、そのための制度や体制が確立していない場合は、それらを変革しながらイノベーションを推し進めていく必要がある。また、イノベーションに対する意識や企業風土を醸成することも重要な活動となる。多くの企業にとって、イノベーション人材の確保と育成は重要な課題となっており、イノベーション推進組織内の人材だけでなく、会社全体のデジタル・リテラシーの向上も重要なテーマとなろう(本連載第71回「イノベーションに求められる人材像」)。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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