「あばた」が激減!
格段に増した美観

 それ故、辻埜が当初に期待したのは、打ち込んだコンクリートを木材や金属、ゴムなどで作る型枠から剥がしやすくする「離型性」の向上だった。ところが、実際に型枠にふたと同じアルミニウムシートを張り、コンクリートを打ち込んでみると、うれしい誤算が起きていた。

「離型性が飛躍的に上がっただけでなく、コンクリート表面の気泡痕や色むらが、段違いに少なくなっていた」のだ。

 気泡痕とは、コンクリートを打ち込む際に一緒に取り込まれた空気(気泡)が抜け切れず、型枠を外した後にコンクリートと型枠の境界面に生じる穴のことで、「あばた」と呼ばれる。

 構造物の評価に直結するコンクリートの美観を損なうことから、従来は打ち込みの際に振動を与え、気泡の除去を図る。ところが、この原始的な方法では気泡を除去し切れず、多くのあばたが残るのが常だ。このため、後工程として手間がかかる表面仕上げ作業が不可欠となっている。

 この点、超撥水処理を施した型枠では、気泡が型枠に接すると、水が接したときと同じように、スルスルと浮力で押し出されてくる。さらに、微細な凹凸がコンクリート表面にも転写されることで光を乱反射し、色むらの少ない明るい仕上がりをもたらした。

 この想像を超えた結果に、「これはいける」と踏んだ。だが、効果こそ確かめられたものの、型枠として使われる木板の実用化に向けた実験に移ったところで、壁にぶつかったという。

「問題は耐久性です。打ち込むのはヨーグルトではなく、コンクリート。現場での使われ方はどうしても荒っぽくなり、超撥水処理を施しても、塗装面を引っかいたりこすったりすれば効果が失われてしまいます。共同研究する東洋アルミニウムの方からは『そんな使い方をするんですか?』と驚かれました」