「あっマズイ! ジャケットがない」

 なんと、乗ってきた電車の網棚に、講演本番で着るジャケットを忘れてしまったのです。気づいても、時すでに遅し。いまから戻っていては、間に合いません。

 講師として壇上に立つのにジャケットがないなんて、まるで格好がつきません。もうすっかり話す原稿のことはすっ飛んで、どうこの窮地をリカバリーするか、必死に考えながら会場に到着しました。

 講演の冒頭、私はこう切り出しました。

「皆さん、今日のテーマは、『見方を変えて人生を変える』でしたね。どんなことが起きても、それをプラスに変える見方を探せばいいのです。ところで、皆さんはお気づきでしょうか。今日、私はジャケットを着ていません。実は、ここに来る途中で電車の網棚に置き忘れてしまったのです」

「でも、忘れたことをこうして皆さんに話し、笑ってもらえば、見方を変えてマイナスをプラスに変える自分を、ナマで見てもらえると思ったのです」

「これが、会社の講演でなくてよかった。スーツ姿のビジネスマンを前に、ピンクのシャツの上着なしじゃ、『なんだ、あいつは?』ってことになりそうですよね」

 会場からはクスクスと笑い声が聞こえてきました。こうして私の失敗は、逆に会場の皆さんに勇気を与えるよい事例となったのです。

 窮地を脱出するには、何が必要なのでしょうか。もちろん、どんな場面にも通用するような「ものの見方」があればいいですが、残念ながらそうしたものはありません。ただ言えることは、その問題にしかめっ面をして向き合うのではなく、少し視点をずらしたり、人がしないようなアプローチをしてみたり、自分を笑いのネタに変えるような、ゆるさ、余裕、ユーモアのセンスといったものが大切であるのは間違いなさそうです。

 次回は、逆転の発想ができる「ものの見方」を探っていきましょう。

 


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窮地から抜け出す「ものの見方」

この31のドリルは、ただのクイズではありません。これこそ、ふだんのあなたの見方、思考パターンの縮図なのです。楽しみながらドリルをこなしてい くことで、自分の「思い込み」に気づき、それを修正していくことができます。思い込みのメガネをはずせばココロは軽くなり、悩まされ続けてきた問題もたち まち解決します。

 

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