2100万円を返金した
真の意味

 ある年、経営サポート事業でこちらから3社のお客様にお引き取りいただき、すでにいただいていた代金を全額返金したことがあります。

 経営サポート事業の目的は、社長が幹部と一緒に学んで会社をよくすること。自分ひとりで勉強して満足するだけのセミナーマニアの社長とは方針が合いません。お互い不幸になるので、丁寧に説明してお引き取りいただきました。

 返金額は3社で2100万円。

 正直、これだけの大金(利益)を失うのは痛い。
 しかし、目先のお金ほしさに方針から外れたことを許してしまったら、事業の根幹が揺らぎかねない。
 たとえ損をしてでも、貫くべきことは貫かなくてはいけない。

 私が躊躇なく「損の道」を進めたのも、キャッシュを潤沢に持っていたからです。

 もしキャッシュに余裕がなければ、損をすべき場面で損をすることができず、大切なモノを失っていたかもしれません。

 本書の冒頭に紹介したモリチュウの森社長も、キャッシュがあったから病気の営業部長を救うために飛行機をチャーターできました(この話を講演ですると、会場が必ずシーンとなり、どんな人も聞く耳を立てる)。

 キャッシュは、会社という容れ物だけでなく、そこに込められた理念や想い、働く社員の命や生活を守るためにあります。

 まさに、「経営は現金に始まり現金に終わる」のです。

 700社以上を診てくると、残念ながら、100人中99人が陥る「アリ地獄」があります。これは面白いほど共通しています。
 ぜひ、第1回連載にある、ひとつでも当てはまったら危ない!【あなたの「会社の危険度」10のチェックリスト】をチェックしながら、『数字は人格』を体細胞に植えつけていただけたらと思います。